寂しくもある「リプレー検証」 今季は魂込めた正確ジャッジを

[ 2017年1月6日 09:00 ]

昨年の日本シリーズ第2戦6回裏無死二塁、広島・菊池の左前打で本塁へ滑り込む二塁走者の田中(捕手大野)。判定はアウトも日本シリーズ史上初のリプレー検証で覆った
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 時代の流れとはいえ、少し寂しい気持ちもある。プロ野球における「リプレー検証」だ。不可解な判定は減る一方で、血気盛んに猛抗議する監督や、「俺がルールブックだ!」と言い放ったとされる二出川延明審判員(89年に88歳で死去)のような個性ある審判員を目にする機会も減るだろう。

 昨年はリプレー検証が頻発したシーズンだった。最大の要因は本塁での危険な衝突防止のため導入された「コリジョン(衝突)ルール」だ。シーズン途中までは守備側が走路に入ったかどうかを厳格に適用し、衝突がなくてもアウト判定がセーフに覆るなど不可解な判定が続出。日本野球機構(NPB)には各球団から意見書が相次いだ。7月22日からは新たな運用基準として「衝突があったかどうか」が重視されてからはトラブルが減ったが、リプレー検証は事あるごとに実施された。

 ある球団幹部は「正直、去年は審判に対して不信感しかなかった。そんな状態は球界全体にとってマイナスでしかない」と振り返る。今年は「併殺阻止の危険なスライディング」が禁止され、今月中に12球団担当者に説明会も開かれる。少なからずプレーに影響は出るだろうが、もう昨年のような混乱は見たくない。

 NPBは13年から「アンパイア・スクール」の制度を導入した。審判養成システムにより、同年以降に審判員を目指す人間は1軍の試合をジャッジするまで最低でも6年以上がかかる。注目度も高く、正しくジャッジして当たり前のプロ野球の審判員。NPBも常に技術向上を目指している。

 野球で塁上のクロスプレー、特に本塁上はファンが最も盛り上がる瞬間のひとつだ。最後は球場全体の視線が判定を下す審判員に集中する。「リプレー検証」に頼り過ぎることなく、魂を込めた正確なジャッジでプロ野球を盛り上げてほしい。(記者コラム・山田忠範)

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2017年1月6日のニュース