阪神・金本監督 2年目の覚悟 我慢に挑む

[ 2017年1月1日 12:58 ]

「挑」の文字を手に、2年目への決意を語った金本監督
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 2017年は「我慢に挑む」―。阪神・金本知憲監督(48)がスポニチの新春インタビューに応じ、今季スローガン「挑む」をテーマにトークを展開した。オフはオリックスからフリーエージェント(FA)宣言した糸井嘉男外野手(35)の獲得で戦力補強に成功。とはいえ、抜本的チーム改革は、まだ道なかばにも至っていない。就任2年目も腰を据えて若手育成に取り組み、就任以来の大方針である「超変革」を推し進める。(取材・構成=惟任 貴信、山本 浩之)

 ―チームスローガンは「超変革」から「挑む」に変わった。監督自身は何に挑むのか。

 金本監督 今年も我慢の年になると思う。『我慢に挑む』かな。絶対的なレギュラーが(福留、糸井以外)いないんだから、つくっていかないといけない。投手もね。我慢して我慢して、少々のことには目をつむって。なかなかできないと思うけど、つくっていかないと。どういう野球をするか、まったく見えてこないわけだから。例えば(昨季の)横田と江越がそのまま活躍しとったら、あいつらが打っていたら(理想とする野球ができた)…。横田、江越でガーッと行って足でかき回すぞ…と言えるけど、今は言えないから。そこをみんな分かっていないんだよ(笑)。(優勝なんて)簡単にいくわけがない。

 ―観客300万人動員を目標に掲げている。

 金本監督 強くなれば入ってくれるわけだからね。単純に。(動員のためには)優勝争いしないと。

 ―今季からは糸井が加入する。シーズン中の打順は打撃コーチらとの話し合いになると思うが、現時点での監督の理想では糸井に何番を打ってほしいというのはあるか。

 金本監督 分からんね…。どういう選手が(レギュラーに)上がってくるかによって、組み合わせによるからね。これは分からん。まあでも、理想は3番くらいかな…とは思うけど。ただ4、5番に長打力のある選手が控えていたら、(アウトになるといけないから)盗塁が仕掛けられない。そういう場合なら5番の方が足を生かせることになる。もしくは1番か。4番にそんなに長打力が見込めない場合は走ればいいし。そういう場合は3番かなと思うけど。そこ(4、5番の長打力)は大きなポイントと思うよ。キャンベルが25本くらい打つんじゃないか、という長打力を見せてくれたら、一塁走者はジッとしておかないといけない。だからまったく見込めない。分からない。

 ―昨季終盤はある程度メンバーを固定起用し、勝利を重ねた。やはり、オーダー固定が理想か。

 金本監督 (昨季)最後は若手が安定したものを出してくれたから。高山、北條、原口あたりがね。あとは孝介と。ああいう風に安定してくれたら、固定しやすい。(理想は)そりゃあそう(打順は固定したい)。どこのチームだって、そう。刺激を加えるために打順を変えたりするのはいいと思うし。ずっと一緒の打順で固定というのは、なかなかそんな…。選手が力を付けないと無理。基本的には4番が決まって、その前後とか。1、2番とね。

 ―打順を決める上でポイントとなる打順は。また、その候補として誰を思い描いているか。

 金本監督 やっぱり、2番打者(※1)やね。どうしてもね。2番を誰にするかは、けっこうなポイントと思う。あと4番ね。俺としては(2番は)高山で行きたいけどね。ただし、そうなるとジグザグを組む時に左が4番に来るからな…。とにかく、併殺打の少ない打者を置きたい。北條って(2番の)イメージはあるけど足が遅いから。まだ高山の方が、左で足が速いから併殺になる可能性は低い。まあ高山の走力が、(オフの間に)どれだけ上がっているかだけど。それと去年は65打点挙げているから、もうちょっと後ろで…とも思うし。難しいね。

 ―近年の阪神の監督は1年目のBクラスから2年目に飛躍。特に星野監督、岡田監督は金本監督と同じ就任1年目4位から翌年に優勝している。いい流れでは。

 金本監督 それは過去のことやからね。過去の流れやから、あまり関係ないんとちゃう(笑)?(要因は)どうやろ。他の監督は2年目に選手が出てきている。星野監督の時はジェフ(ウィリアムス)や伊良部とかいたし。岡田さんの時は球児と久保田が出てきた。そういうのがないと。真弓さんの時も2位になったけど、城島が来て、ブラゼルもね。そういう要素が強いでしょう。(自分に置き換えると)まあ糸井の存在は大きいね。でも投手でも若いヤツが出てきてくれないと。2005年みたいに後ろを任せられるようなね。岩崎とか石崎とか。欲を言えば、先発をもう一人。ちょっと、秋山あたりに覚醒してほしいね。

 ―昨季は対広島7勝18敗、対巨人9勝15敗1分け。上位2球団を攻略するには?

 金本監督 やっぱり広島は足を封じないと。あと(2本柱の)藤浪とメッセが、かなり打ち込まれてしまった(表1)からね。ジャイアンツはどうかな。やっぱり、あと1つで負けている。全部、勢いをマシソンに断ち切られてしまったイメージやね。マシソン攻略は、なかなか難しいけど(笑)。あとは菅野、田口を…ね。

 ―昨季は広島・ジョンソン、巨人・菅野、田口ら苦手投手の前に完敗した。攻略の糸口とは。

 金本監督 確かにモロに出たわね。やっぱり、いつも言うように、その投手をいかに打つかということ。工夫。漠然と立ち向かっていっても絶対に打てないんだから。そこを選手個々がね。(ベンチから)指示は出すけど。選手個々が、この投手はこうやって打つという風に、ちゃんとやらないと。前に立つとか、短く持つとか、ひたすら逆方向を狙うとか、ひたすら一つの球種に絞って打つとか。そうやってペースを崩していかないと。(秋季キャンプの考える練習は)ちょっと違うけど。あれはケースごとのポジショニングとか、どうしても1点を取る打撃とか、そういうことだったけど、つながってくる部分もある。例えば高山は(秋季キャンプの)実戦練習で内野ゴロを打ちに行った。(意識的な)併殺崩れを。守備がゲッツー態勢だったから。で藤浪の真っすぐに当てに行って三振した。それで高山に言ったのは『こういうタイプの投手で併殺崩れを打とうとした時には、当てに行く感覚では差し込まれてしまう』ということ。それを勉強させるための実戦形式(の意図)だったから。だから今度は高山は違う打ち方をしないといけない。(苦手意識に)メンタル的な要素はないと思うけどね。

 ―昨季はチーム得点圏打率・249(表3)。リーグワーストではないが、広島などに比べると低い。監督も重視する得点圏打率の向上には。

 金本監督 そりゃあメンタルでしょう。ここ一番という場面では、相手も良い投手が(マウンドに)いるからね。(自軍が)1―2で負けていて終盤で、(巨人なら)マシソンがいたりね。そういうセットアッパー、クローザーがいる。まずは力で勝たないと打てないし。打てなくても併殺崩れを打つとか。相手の内野手が前に来ていても何とか、クシャッとポテンヒットを打つとか、そういうところだと思う。そういうことが分かっていたら、打席内で余裕が出る。『これでいいんだ』という。俺だって最初はヒットを打ちに行っていたけど、追い込まれたらもうヒットを打ちに行こうと思わない。2アウトなら、もうどうしようもないけど。最低限の仕事をしようと切り替えていた。

 ―昨季は甲子園で26勝36敗1分けの借金10。甲子園のファンを喜ばせたいという思いがあると思うが。

 金本監督 そりゃあ、そうよ。(甲子園とそれ以外の球場で戦い方の違いは)どうやろ、そんなそこまで違わないやろ。まあ後攻というのはあるからね。裏があるから、少々、同点はオーケーという状況は増えてくるけど。でもそれが勝敗を左右するかと言えば、そんなにしないと思う。(甲子園の負け越しは)偶然やと思うよ。マツダでも勝っていないんだから。あまり関係ない。東京ドームでも。(グラウンドが広いからとかも)あんまり関係ない。狭いところでも勝っていないわけだから。それより(球場に)左右されない(自分たちの野球を)ね。ただそれを計算できるほど、(選手が)育っていないんだよ。今はまだ、計算できない。JFKがいれば計算するけど(笑)。(強い時の)中日だって浅尾がいて岩瀬がいた。昨季、ウチがリリーフで何試合、落としたか(※2)。

 ―ドラフト1位の大山は状態次第では昨季の高山のように1年目から使うのか。

 金本監督 もちろん使うよ。打てば使うから。(ポジションは)どうやろうな。そりゃあ、もちろん難しいところ(二塁や遊撃)もやらせるよ。そこも変えていくところだから。(これまでは)すぐ簡単な方に持って行って。だから今は、逆に戻している。中谷にしても原口にしても。いろんなポジションをやらせてみるということが大事。案外、(大山は)二塁が合うかもしれない。(キャンベルとの競争も)もちろん。三塁なんて、他にも中谷もいるし、陽川もいるから。2人が化けるかもしれないしね。

 ―今季のチーム浮沈の鍵を握る存在として投手では藤浪、野手では鳥谷の名前が挙がる。昨季の2人は、どの点が物足りなかったか。

 金本監督 どうやろうね。やっぱり藤浪なんか(負け越した理由が)分からんね。投手はね。球威が落ちたわけでもないし。何やろう? (ボールは)暴れ馬やのに、繊細やから。向上心が強すぎて。向上心はいいんだけど、それで神経質になりすぎている部分があるかな。まあでも、(昨季で)いい経験をしたと思う。最後の2つ勝った(※3)というのも、大きいと思うしね。そりゃ、そう(今季15勝くらいの期待)やね。貯金10近くしてほしいよね。

 ―就任1年目は、チームの土台づくりに重点を置いた。2年目の金本阪神が取り組むこととは。

 金本監督 まだまだそういう(土台作りの)作業は必要。じゃあ、北條、高山が今年も昨年くらいやるかと言えば、放っといたら絶対にやらない。ちゃんと目を光らせてやらせないと。もう大丈夫、と手を離したら(選手として)終わるよ。手を離すのは数年後のことやね。 (終わり)

 ※1 11人が先発2番を務め、チーム打率は・255。最多は大和の36試合。

 ※2 昨季の76敗中、リリーフで16敗。最多は藤川の4敗、次いでマテオとドリスが3敗。先発の勝利を消しての敗戦は5度あった。

 ※3 9月22日広島戦(マツダ)で5安打完投勝利。30日の巨人戦(甲子園)は勝敗なしも6回1安打無失点の力投。チームはサヨナラ勝ちした。

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