29年ぶり公式戦青森開催の舞台裏…誘致尽力した元ハム投手の弘前市職員

[ 2016年12月27日 10:15 ]

弘前市の職員として誘致活動に尽力した今関さん
Photo By スポニチ

 来年6月28日に青森県弘前市で楽天−オリックス戦が開催される。青森でプロ野球の1軍公式戦が開催されるのは、1988年7月17日の広島−ヤクルト戦(青森県営)以来、29年ぶり。球場の改修と誘致活動に欠かせなかったのが、15年から弘前市職員として尽力してきた元日本ハム投手・今関勝さん(45)の存在。開催決定までの今関さんの取り組みを追った。 (大林 幹雄)

 11月28日、東北6県18会場で楽天のシーズン報告会が行われた。4年目を迎えた球団行事だが、弘前では初めてだった。同11日に青森で29年ぶりとなる1軍公式戦が弘前市運動公園野球場で開催されることが決定。藤田、福山、三好の3選手が300人の来場者をトークショーで沸かせ、藤田は「(来年に向けて)盛り上がってくれているのを実感できた」と喜んだ。運営を手伝うため会場の隅に陣取った今関さんも、イベントを感慨深げに見守っていた。

 市職員としてのオファーを受けた時に「なかなか関われないこと。魅力を感じた」という。トップアスリートの育成とともに「スポーツを通じた地域からの発信」をライフワークにしてきた。2年前から誘致活動を始めた弘前市は、自治体とプロ野球をつなぐ存在として白羽の矢を立てた。07〜12年に小学生を対象とした楽天の野球スクールで指導者を務めたのを機に東北との縁が生まれた今関さん。15年1月に市職員となり「文化スポーツ振興課総括主査」が現在の肩書だ。

 仙台への楽天戦観戦ツアーや弘前でのパブリックビューイングなど、誘致イベントの運営を担当。野球教室の開催による振興活動にも取り組んできた。当初は戸惑いの連続。「公務員の仕事というのが初めてでしたし、はんこ(の決裁)一つをとっても。あとは生活面ですね。仙台は雪が積もらない。(神奈川県出身で)雪のあるところで生活したことはなかったので」。しかし、市職員に転身する際「やってみればいいじゃない」と背中を押してくれた岩手県出身の妻・知香さんに支えられた。今年7月に弘前で開催されたイースタン・リーグ楽天戦では日本ハム・田中幸雄2軍監督ら元同僚と再会。「頑張れよ!」と激励された。

 誘致イベントや野球教室を通じて「ソフト面」で貢献すると同時に、大きな役割を担ったのが、球場改修という「ハード面」に関してのアドバイスだ。「とにかく“選手が使いやすく”という部分です」。プロの試合には欠かせない監督室やミーティングルーム、シャワールームの必要性や配置について、元プロ野球選手としての目線から助言した。ブルペンはこれまで一塁側と三塁側、屋外に2レーンずつ。これを整備するだけでなく、屋内に2レーンずつ、計4レーンを新設した。

 誘致決定がゴールではない。現在の課題は「野球熱を上げることです。市民の方と一緒に盛り上げたい。野球とソフトボールの合同イベントも仕掛けたり、教育につなげることも目標です」と話す。愛称の「はるか夢球場」は弘前市出身でソフトボールの元日本代表選手で、08年北京五輪では監督として金メダルへ導いた斎藤春香さん(46)から取ったもの。斎藤さんは市職員の先輩として現在、今関さんと同じ職場で勤務している。

 今関さんは日本ハムでの現役時代、96年に11勝を挙げるなど通算26勝を挙げた。スキンヘッドで雄叫びを上げながらの投球がトレードマーク。一方、99年には売れ行きが伸びないオープン戦のチケットを自ら手売りし、話題を呼んだ。「時代が早過ぎましたね。いろんな方に注意を受けました」と苦笑いするが、ファンやチームのために身を粉にして動く姿勢は当時と重なる。青森県民の悲願がかなう「6・28」まで、あと半年。まずは球場を満員にすべく全力投球する。

 ◆今関 勝(いまぜき・まさる)1971年(昭46)2月9日、神奈川県生まれの45歳。武相を中退後、大楠−ウィーンベースボールクラブ−NTT東京(現・NTT東日本)を経て92年ドラフト3位で日本ハム入団。11勝を挙げた96年に球宴出場。00年限りで日本ハムを自由契約となった。通算成績は114試合登板で26勝30敗、防御率4.39。01〜03年は米独立リーグでプレーした。現役引退後は野球アドバイザー、楽天スクールのコーチなどを経て15年から弘前市職員に。同年からクラブチーム「弘前アレッズ」の監督も務める。

続きを表示

この記事のフォト

2016年12月27日のニュース