多くのプロ野球選手が「最高」と認める主将がいる

[ 2016年12月18日 09:27 ]

社会人ベストナインに選出され、Vサインで喜ぶ東京ガス・山内
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 【君島圭介のスポーツと人間】彼を例えるなら「コンセント」ではないだろうか。そこにあるのが当たり前と誰もが思う。ありがたみは忘れがちだが、なければ大型テレビも映らないし、照明も輝かない。

 広島・野村祐輔、ロッテ・石川歩。セ・パ両リーグで今年最も輝いた2人の投手には共通点がある。過去に同じ捕手とバッテリーを組んだ。現在、社会人野球の東京ガスで主将を務める山内佑規だ。

 桐蔭学園−明大−東京ガスと山内はすべてのチームで主将を任されてきた。同期や後輩にはプロ野球選手が多い。高校の1学年下にロッテ・鈴木大地、中日・井領雅貴。大学の同期に阪神・荒木郁也、1学年下に楽天・島内宏明、2学年下に広島・上本崇司、3学年下に日本ハム・岡大海らがいる。今年10月のドラフト会議でオリックスから1位指名を受けた東京ガス・山岡泰輔もそうだ。

 名門を渡り歩けば仲間にも恵まれる。本当にそうだろうか。むしろ山内と一緒に野球が出来た幸運を享受したのは、プロ入りした彼らの方かもしれない。

 ロッテで3年連続主将を務めた鈴木が高校時代を振り返る。「山内さんが抜けて僕らの代は主将を置かなかった。存在が大きすぎて誰も代わりができなかった」。ロッテで主将を務める上で山内を参考にしているか。そう尋ねると、鈴木は否定した。「あの人のまねは誰にも出来ない。ただ、背伸びしないで自分らしくと心がけている。それは山内さんから学んだのかもしれない」。

 大学で1学年下の野村は「行動で周りを引っ張ってくれる人」と評した。社会人で同期の石川は「とにかく真面目。練習熱心。でも押しつけることはしない」と話し、捕手としても「サインに首を振ると、後で振った理由を聞いてきてくれるから振りやすかった」と感謝した。

 山内を入社2年目の秋に異例と言える若さで主将に抜てきした東京ガス監督の菊池壮光は「行動がブレない。試合に勝っても負けても自分が打っても打てなくても、昨日と同じことを黙々と明日もやってくれる」と教えてくれた。

 山内を知るプロ野球選手が声を揃えて「最高」と言う。何か秘訣があるのだろうか。主将として大事にしていることを本人に聞いた。

 「チームが元気になるように率先して声を出す。率先して片付けをする。心がけているのはそれくらいです」

 人懐こい笑顔を浮かべ、山内はそう答えた。その彼が整えた環境だから多くの選手が本来の力を十二分に発揮出来た。プロの世界できらびやかな活躍をするのが野球のすべてではない。彼らを鼓舞し、輝かせてきた「コンセント」は日本中に存在する。脚光を浴びることは少ない。だからこそ、その機会には最大級の賛辞を送りたい。

 日本野球連盟(JABA)が選んだ本年度の社会人ベストナイン。捕手部門に「山内佑規」の名前があった。(専門委員、敬称略)

 ◆君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年6月29日、福島県生まれ。東京五輪男子マラソン銅メダリストの円谷幸吉は高校の大先輩。学生時代からスポーツ紙で原稿運びのアルバイトを始め、スポーツ報道との関わりは四半世紀を超える。現在はプロ野球遊軍記者。サッカー、ボクシング、マリンスポーツなど広い取材経験が宝。

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