驚がくの忍者守備 広島・菊池涼介

[ 2016年12月17日 10:30 ]

打球に飛びつく広島・菊池
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 【宮入徹の記録の風景】あれがアウトになるのか−−。ヒット性の打球を巧みにさばき、どれだけ凡打に終わらせたことだろう。菊池涼介内野手(26)の広い守備範囲は他の二塁手の追随を許さない。内野手の補殺(アシスト)は主にゴロを処理すると記録される。今季の菊池はこの補殺数が525。セでは次いで多いヤクルト・山田の417を100以上も引き離しリーグ最多だった。

 歴代二塁手のシーズン最多補殺記録は1位から3位まで菊池が独占している。内訳は1位14年535、2位13年528、3位16年525。4位は05年中日・荒木雅博496、5位は49年巨人・千葉茂495と続く。つまり二塁手の500補殺以上は菊池以外にいない。大リーグでは500本塁打以上の達成者を称して「500本塁打クラブ」、3000安打以上を「3000安打クラブ」などという。菊池はいわば二塁手の「ひとり500補殺クラブ」といったところになるだろうか。

 全ポジションを見渡してもシーズン500補殺以上は三塁手で55年大映・坂本文次郎522、遊撃手で48年中日・杉浦清502、54年近鉄・鈴木武501とわずか3人で3度。複数回記録したのはプロ野球の長い歴史の中でも菊池しかいない。広範囲に動いてゴロをさばく技術は抜きんでている。

 今季の活躍ぶりは守備だけではない。安打数はリーグ1位の181本。犠打も23本でセでは最多と、打撃面でも貢献度の高い働きを見せた。昨年まで同一シーズンに最多安打と最多犠打を記録した打者はおらず、菊池はプロ野球初のケースになった。それでもMVPの投票では同僚の新井がセ最多の781票を集めたのに対し、菊池は2位の429票と大差。攻守とも際立った成績を考慮すれば、もっと接戦になってもおかしくなかったと思う。

 話は飛ぶが、これまで500補殺にあと一歩まで迫った遊撃手がいる。右へ左へと抜群のフットワークを誇った小坂誠だ。同氏は巨人の2軍内野守備走塁コーチに就任したばかりだが、現役時代はロッテ、巨人、楽天と14年間で3球団に所属。ロッテ在籍時の00年489、01年492、03年483と480以上の補殺を3度記録した。今も歴代最高の遊撃手として小坂を推す声が少なくない。こうした数字からも、いかに優れたプレーヤーだったかが分かる。

 今季セの遊撃手では菊池と二遊間を組む田中広輔がリーグ最多の467補殺を記録。昨年も遊撃手として両リーグ1位の476補殺をマークしており、菊池同様守備範囲は広い。同一球団で2人そろって500補殺はもちろん過去にない。菊池、田中は昔風に表現すれば守備でゼニの取れる選手。来季はコンビで前人未到の高みを目指してほしい。(専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から26回連続で資料説明役として出席。

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