ヤクルト平井 野球教室で少年たちの心をがっちりつかんだ“熱意”

[ 2016年12月15日 11:10 ]

野球教室で打撃を披露するヤクルト・平井
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 和気あいあいとした雰囲気が一変した。10日に埼玉県川口市内で小学生約200人を対象に行われた野球教室(川口遊技業組合主催)。投手がマウンド付近に集められる。ヤクルト・平井の眼差しは真剣だった。「さっきのキャッチボールじゃうまくならんよ。もっと1球1球大事にせんと。僕も由規投手も肩をケガしたことがある。正しいフォームを確認して投げることが大事やから」。

 プロ野球はシーズンオフに選手が全国各地で野球教室に参加する。子供たちが現役の選手に教えてもらう機会は滅多にない。だが、希望と満足度が必ずしも比例するわけではない。選手がどう接していいか分からず、言葉をほとんど交わさないまま終わる時もあった。

 今回の野球教室は違った。由規、荒木が丁寧に指導する中、マイクを片手に場を取り仕切る平井から特に熱を感じた。「守っている野手も見ている。投手はチームの代表という気持ちで絶対に心が折れちゃいけない」。子供の振る舞いもしっかり見ている。質問タイムで沈黙が流れる中、勇気を出して手を挙げた男児には「えらいな、ええ質問や」と頭をなでていた。投球練習では1人1人の臀部(でんぶ)を支えて、一本足でバランス良く立つ姿勢の重要性を熱弁。「そう!今のフォームや!」と大きな声で褒めていた。

 平井は右肩痛で育成選手だった当時のウインドブレーカーを着ていた。背番号「167」。存在を知らなかった子供もいただろう。だが、真っ正面から向き合う真摯な姿勢は純粋な心をがっちりつかんでいた。練習最後のロングティーで実演指導。最初の数球は飛ばずにため息が漏れた。フェンスギリギリの打球を飛ばすと、「頑張れ!」と声援が飛んだ。そして左翼フェンスを越えた打球が飛び出すと、「うわあ!すげー!」と子供たちが平井に駆け寄り、小躍りして喜んでいた。

 少年野球の競技人口は減少の一途をたどっている。少子化の影響に加え、サッカー人気も高い。現役選手の野球教室は普及活動の一環として影響力が大きい。参加した子供が神宮に足を運ぶかもしれない。平井、由規、荒木の活躍を見てプロ野球選手を目指すかもしれない。ヤクルトOBで野球教室をサポートする高仁秀治氏(54)は「平井は野球教室で人気があるんです。現役の選手は何でもできちゃうから、子供の気持ちに立つのが難しい。彼はそれができる。助かりますよ」と感謝を口にする。

 グラウンドから引き上げる平井に聞くと、照れ笑いを浮かべていた。「教え方うまくないですよ。僕が一番後輩なのでやらないと。みんな…喜んでました?」。満面の笑みで帰る子供たちの姿を見せたかった。(記者コラム 平尾 類)

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2016年12月15日のニュース