【決断】ソフトB・金子、まさかの戦力外から再出発 スーツ姿で目に輝き

[ 2016年12月13日 10:45 ]

決断2016ユニホームを脱いだ男たち=ソフトバンク・金子圭輔内野手(31)

秋季キャンプでナインにあいさつする金子
Photo By スポニチ

 2軍がウエスタン・リーグの5連覇を決めた9月16日のナゴヤ球場で金子圭は5度、胴上げされた。事情を知らぬ人には今季限りでの「引退」をねぎらう儀式に見えていたかもしれない。ただ、前年も行った恒例行事。ファーム野手のリーダー的存在だった31歳の貢献を称えたもので宙を舞った当の本人も辞める気はさらさらなかった。

 「今季、ずっと2軍だったのなら、ある程度は覚悟していたと思うんです。(球団事務所に)呼ばれるまで、秋季キャンプでどう体をつくるかばかり考えていました」

 内野ならばどこでも守れる堅実な守備が自慢の背番号4は、日本ハムとのクライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージでもベンチ入りしていた。だからこそ、戦力外通告は想定外だった。「ギャップがありました」と混乱し、目標を失った。8月に第1子となる娘が誕生したばかり。この先、どうすればいいか自問自答した。

 答えは出ない。現役続行への意欲さえ湧いてこなかった。苦悩をやけ酒でごまかす日も多くなる。10月22日の戦力外通告から11月12日に行われたトライアウトまで打撃練習は2回。「それでもヒットは打てた」と笑うが、参加を決意したのも現役続行を願う周囲に「受験」という既成事実をつくりたかっただけだった。

 そんなある日だ。「戻ってこないか」との連絡が入る。ソフトバンクから球団職員として再雇用の打診だった。「社会に出て13年間、野球だけしかやってこなかった。いまさら違うことはできない」。道を見失った男には灯台の明かりのように見えた。12月4日に再び、ヤフオクドームの球団事務所にスーツ姿で現れた。各所へのあいさつ回りだ。正式採用は来年1月だが、やさぐれた生活だった1カ月前とは違い、目には輝きが戻った。

 「将来はまた、現場へ行ければいいですね。そのために勉強したい」

 別れを告げたユニホームとの再会が目標だ。身長1メートル80に対し、体重は69キロ。どれだけ食べようが、太れない体質だった。「しんどいイメージだけでした」という現役生活にようやく、踏ん切りのついた笑顔だった。(福浦 健太郎)

 ◆金子 圭輔(かねこ・けいすけ)1985年(昭60)7月23日、千葉県生まれの31歳。志学館では1年夏から正遊撃手となり、投手に転向した3年夏は4番・エースで千葉大会準優勝。03年のドラフト6巡目で内野手としてダイエー(現ソフトバンク)に指名された。10年のシーズン途中にオリックスへトレード移籍したが、12年に復帰。プロ通算13年間で253試合、打率・197、0本塁打、17打点、10盗塁。1メートル80、69キロ。右投げ両打ち。

続きを表示

2016年12月13日のニュース