大リーグ新労使協定 食事代カットは「史上最悪のXマスプレゼント」

[ 2016年12月12日 10:45 ]

 今月2日に合意に達した大リーグの新労使協定。日本では、日本ハム・大谷のメジャー挑戦に影響を及ぼす海外選手獲得に関する年齢規定の変更が大きな話題となっているが、新協定の合意事項の中には選手の「財布」に影響する変更もあった。遠征先で支給される「ミールマネー」、いわゆる食事代。1日100・5ドル(約1万1560円)だったものが、来季はたった30ドル(約3450円)になる。1日70ドルの削減。遠征はシーズン81試合なので、年間5670万ドル(約65万2100円)のカットとなる。

 これには理由がある。新協定では選手の健康面に配慮し「ビジタークラブハウスの食事を充実させる」ことも盛り込まれた。これまでは、選手からチップを受け取るクラブハウスマネジャーがケータリングなどでピザやパスタ、チキンなどを調達。しかし、来季からはビジターチーム用にもシェフと栄養士を雇い、ホームチーム同様の食事を提供することになった。だから「外食しなくても大丈夫」というわけだ。

 ビジターチームの食事について、来季からアストロズでプレーする青木に聞いた。「チームによってバラバラ。ちゃんとした食事が出てくる球団もあるし、デーゲーム前はサブウェイのサンドイッチだけというところもある。クラブハウスマネジャーは最終日に選手からチップをもらうから、3連戦の最後の食事は充実していることが多いよね」とのこと。

 今回の変更は、チップをめぐるトラブルが増えてきていることも背景にある。今年7月、ホワイトソックスの選手がマリナーズのクラビー(クラブハウスの世話係)にチップ支払いを拒否する事件が起きた。通常、チップは選手が直接クラビーに手渡すが、マ軍はチップを一括で集め、その60%を球団で管理するというルールを決定。これにホ軍の選手たちが「世話をしてくれるクラビーへの感謝の印なのに、なんで球団が横取りするようなことをするんだ」と反発した。来季からは球団がビジターチームの食事も用意するために、チップも簡素化される。

 今回の食事代カットについて、ドジャースからFAとなった左腕アンダーソンはツイッターで「史上最悪のクリスマスプレゼント」と投稿するなど、選手の間では早くも評判が悪い。試合後、球場では食べずに日本料理店で食事することが多い日本人選手にとってもあまりうれしくないが、青木はどうか。「僕はメジャーで最初の3年間が中地区の球団だったので、遠征先も夜遅くまで開いている日本料理店なんてなかった。球場で食事することが多かったし、それが当たり前でもう慣れた。食事が改善されるのはうれしいね」。1日70ドルのカットよりも食事の充実を歓迎していた。(記者コラム・甘利 陽一)

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2016年12月12日のニュース