人類史上最速170キロは無名の右腕?

[ 2016年12月10日 10:15 ]

 最初の人類史上最速170キロ到達はチャプマン(ヤンキース)でも大谷(日本ハム)でもなく無名の右腕?

 あらためて大リーグの人材の豊富さを痛感させられたことがあった。6日にレッドソックスとホワイトソックスの間で成立した4対1の大型トレード。レ軍が通算74勝のメジャー屈指の左腕セールを獲得し、その見返りとして有望株の本格派右腕コペックら4選手を放出した。

 1メートル90、93キロと恵まれた体格のコペックは、14年ドラフトでレッドソックスから1巡目指名(全体33番目)された20歳右腕。まだルーキーリーグと傘下1Aで3シーズンのプレー経験しかないが、その能力に驚かされた。米誌ベースボール・アメリカによると、今年7月に1Aセーラムの先発を務めたウィルミントン戦で最速105マイル(約169キロ)を記録。世界最速は左腕チャプマンがレッズ時代の10年とヤンキースに所属した今季の2度記録した105マイルとされている。大リーグ全30球場に配備された解析システム「スタットキャスト」が設置されていないマイナー球場のスピードガンで計測された数字だが、弱冠20歳の先発投手が肩を並べたのだ。セーラムのジョー・オリバー監督は「スピードガンに“105”が表示されて、側にあった別のスピードガンでダブルチェックしたが、同様に“105”だったよ」と当時の状況を説明した。

 レ軍は今季傘下2Aまでのプレー経験しかなかった22歳の有望外野手ベニンテンディを3Aを飛び越えてメジャー昇格させた。コペックも心機一転、新天地で飛び級でのメジャー昇格が期待される。だが、過去3シーズンのデータから読み解くと、9回あたりの奪三振数は11・5と高い数字を示す一方、9回あたりの与四球数も4・6と高い。暴投も今季は12試合で11を数え、昇格に向けては制球力の改善が必須だろう。

 今季序盤には同僚と口論になって取っ組み合いとなり、手を骨折した“若さ”も見られる右腕。優等生タイプの大谷とは性格面では正反対のようだ。それでもスピードボールはやはりファンを魅了する。メジャーでは100マイル(約161キロ)を超える救援投手は数多くいるが、長いイニングを投げる先発投手ではメッツ・シンダーガード、大谷らごくわずかだ。「速いボールを投げるだけならいくらでもいる」とされるマイナーリーグ。その壁を打ち破ってメジャーの舞台に上がってくる日が待ち遠しい。(記者コラム・東尾 洋樹)

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