おかわり君2世返上へ 西武・山川穂高

[ 2016年12月10日 09:50 ]

7月30日のオリックス戦の8回表2死、右中間に同点ソロホームランを放つ山川
Photo By スポニチ

 【宮入徹の記録の風景】負ければ最下位転落の危機を救った。7月30日のオリックス-西武戦(京セラドーム)でのことだ。西武が1-2のビハインドで迎えた8回表2死無走者の場面。打席に立った西武・山川は初球、2球目と吉田一の低めのフォークを空振り。あっさりノーボール2ストライクに追い込まれた。続く3球目。148キロの直球に食らいつくと打球は右中間に伸びてそのままスタンドへ。6月25日ロッテ戦以来自身1カ月ぶりの今季第2号は貴重な同点弾となった。その回、栗山の適時安打が出てチームは勝ち越し。3-2でオリックスを下した。

 カウント0-2は打者のとっては絶対不利の状況。まして初球、2球目と空振りの山川は内心「しまった」と思ったに違いない。0-2からの本塁打はシーズンを通じても数えるほど。今季は両リーグで13本。本塁打の総数が1341本だから、ほぼ100本に1本の割合にしかならない。

 この中で空振り2度から3球目を運んだのは、山川の他に日本ハムのレアードが5月19日ソフトバンク戦で記録したのがあるだけ。西武では03年9月12日の日本ハム戦で、マクレーンが5回に伊藤剛から放って以来13年ぶりの珍しい一発だった。

 今季の山川は1軍公式戦で自己最多の14本塁打をマークしたが、イースタンではリーグ1位の22本塁打。14年(21本)以来2度目の本塁打王になった。イースタンで本塁打王を獲得し、なおかつ1軍の公式戦で2桁本塁打をマークしたのは80年のロッテ・落合博満以来2人目。この年落合は1軍で15本塁打、イースタンでは11本塁打を放ちキングに輝いた。その後落合はプロ野球最多の三冠王を3度獲得しており、山川も1軍でどこまで数字を積み上げるか注目だ。

 今季の山川は1軍公式戦での打席数は157で打数は139。シーズン規定打席は443だから286打席も足りなかった。それでも本塁打率(本塁打1本当たりに要した打数)は9・93。パの本塁打王を獲得した日本ハムのレアードが14・03、山川と同じく規定打席不足だった日本ハムの大谷でも14・68だから山川の生産率の高さが目立つ。また、イースタンの本塁打率は10・77。ファームより1軍での数字が上回ったのだから本人も手応えを感じたことだろう。

 スポニチで長く西武担当を務め、現在遊軍のベテラン鈴木勝巳記者によれば、西武にはおかわり君が4人いるという。元祖はもちろん中村で山川は「おかわり君2世」、坂田が「左のおかわり君」、今季ドラフト2位で西武入りした1メートル91、105キロの中塚が「投げるおかわり君」となる。

 最近のイースタン本塁打王を見ると日本ハムの中田が09年、DeNAの筒香が10年(当時湘南)、11年(同横浜)に獲得。その後大きく飛躍した打者が少なくない。山川も来季は本塁打王争いに参戦し、おかわり君一家からの独立を果たしたい。(専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から26回連続で資料説明役として出席。

続きを表示

2016年12月10日のニュース