ヤクルト・今浪が語る“チルドレン”中島&西川の「1億円事件」

[ 2016年12月6日 11:40 ]

2日、契約を更改したヤクルト・今浪
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 チームが変わっても、変わらない関係がある。

 「事件が起きたな。1億円事件」

 ヤクルト・今浪隆博内野手(32)がそう切り出したのは、日本ハムの中島卓也内野手(25)、西川遥輝内野手(24)のことだ。2人は今オフの契約更改で、揃って年俸を1億円に乗せた。

 今浪にとって、トレードで移籍した14年途中までを過ごした古巣の仲間。自身が「今浪チルドレン」と称する、かわいがってきた後輩たちの大台到達には、一言もの申さないわけにはいかない。というわけで「1億円事件」について語ってくれた。

 「あいつの持っている力を考えれば遅い到達」と言うのは、西川について。プロ6年目の今季、主に左翼手として打率・314、41盗塁でチームを牽引。ベストナインにも選ばれた。広島との日本シリーズ第5戦(札幌ドーム)で見せたサヨナラ満塁本塁打は記憶に新しい。11年ドラフト2位で入団したときから、光る打撃センスと俊足で一目置かれていたが、その才能が一気に爆発した。近くで見てきた今浪にとっても「やっと」の思いが強かったようだ。

 一方、北斗の拳になぞらえ「サウザーの気持ちがよく分かる。“でかくなったな、小僧”って感じ」と感慨深げだったのは、中島について話題が及んだときだ。同じ福岡出身。特にかわいがっていた存在でもある。実は今シーズン開幕前、中島からこんなことを言われたという。「今年絶対に1億円までいきます」。そして臨んだプロ9年目に全143試合で遊撃を守り、リーグタイ記録の62犠打。10年ぶりの日本一へと突っ走り、見事に有言実行した。

 もう1人、忘れてはならない存在がいた。「谷元も一億やろ?世の中おかしなこともあるな」。日本シリーズ第6戦で胴上げ投手になった右腕とは同じ84年生まれ。2人で食事に出かける仲だが、なぜか「仲良くありません」と言い切る。「オフになってメシの誘いがきたけど、それも軽く受け流したわ」と話しながら、どこかうれしそうだった。

 今浪自身も今季、自己最多の94試合に出場して年俸アップを勝ち取った。「レギュラーを目指さない」と言う姿には、批判の声も聞こえてくるという。しかしプロ野球という厳しい世界で自分の立場を見つめ、いつどんな場面の出場にも対応できる努力を怠らない。甲状腺機能低下症を患い投薬治療を続け、手術を検討していた右膝は「もう手術ができない状態」と保存療法で進むしかないというが、勝負強い打撃に内野全てと外野もこなすユーティリティープレーヤーはチームに欠かせない。年俸は「チルドレン」たちに遠く及ばない。しかし彼らに負けじと来季も「最強の脇役」として、そしてたまに「主役」となって、神宮を沸かせてくれるはずだ。(記者コラム・町田 利衣)

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2016年12月6日のニュース