【決断】ハム・武田勝「若手を心から応援」新天地でも貫くスタイル

[ 2016年12月3日 10:40 ]

決断2016ユニホームを脱いだ男たち=日本ハム・武田勝(38)

オカリナを吹く武田勝
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 残暑が厳しかった9月のことだ。千葉・鎌ケ谷の2軍施設。38歳の武田勝は、ここ数年感じていた思いが確信に変わっていた。「若手を心から応援したい」――。ここから決断は早かった。

 現役引退の意向を球団に伝え、ソフトバンクとし烈な優勝争いを繰り広げている後輩たちには、「俺のために優勝しろ」と直筆メッセージを送った。10月のポストシーズンは打撃投手としてチームに同行し、日本一をサポート。「俺のために優勝しろ」の言葉がデザインされたTシャツを多くの選手が着用した。

 日本一から一夜明けた30日、球団幹部から新天地としてBCリーグの石川への派遣を打診された。しかも、コーチとフロント業の「二刀流」だ。「不思議な縁がある。導かれてるのかも…」。実は今年1月、かつての同僚で石川でコーチを兼任する多田野に誘われて、初めて石川で自主トレを行った。厳しい環境の中で、独立リーグの選手たちがトレーニングする姿も目の当たりにしていた。迷わず受諾し、今月中に入団会見も行う。

 28歳でプロに飛び込んだ。直球は130キロ前後だが、変則気味の投法と投球術で通算82勝を挙げた。13年オフに「応援大使」で訪れた北海道・上ノ国町で贈られたオカリナをお立ち台で吹くなどサービス精神にあふれた。「11年間、球速も上背も筋力もなくやってきた」と振り返るが、現役生活で一番の思い出は「11年球宴で1イニングで4発打たれたこと」と笑う。

 新天地で大切にするのは「言葉」だ。独立リーグにはハングリーな選手が多い一方で、夢を早々にあきらめる者も少なくない。「“俺のために…”で言葉の力を感じたし、逆に言えば怖さも感じた。この経験を生かしたい」。そんな選手たちに対し、時には優しく、時には厳しい言葉を掛けてサポートするつもりだ。

 「石川にもオカリナは持っていく。でもいきなり吹いたら“変な人”。まずは自分という人間を分かってもらうために頑張ります」。もがき、苦しみ、試行錯誤を繰り返した11年。新天地でもスタイルは変えない。(山田 忠範)

 ◆武田 勝(たけだ・まさる)1978年(昭53)7月10日、愛知県生まれの38歳。関東第一、立正大、シダックスを経て05年の大学生・社会人ドラフト4巡目で日本ハムに入団。09年から4年連続で2桁勝利をマークするなど、通算82勝61敗1セーブ、防御率3・02。1メートル76、73キロ。左投げ左打ち。

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