【決断】西武・星 プロ入り前の夢はアマ指導者 2軍育成コーチで第一歩

[ 2016年12月2日 11:05 ]

決断2016ユニホームを脱いだ男たち=西武・星孝典捕手(34)

12年の現役生活にピリオドを打つ星(手前)。育成コーチとして第二の人生を歩む
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 10月7日午後1時すぎだった。西武・星は西武プリンスドームで練習を終えると球団幹部から呼び出され、戦力外通告を受けた。トレーニングウエアを着たままだった。

 「せめてスーツを着て話を聞きたかったけど、戦力外と言われた直後に2軍の育成コーチの話をいただいた」。戦力外通告は覚悟していたものの、コーチ就任の打診は想定外だった。

 「一度、部屋を出て冷静になりたかったので、“時間をください”と伝えた」。すぐに自宅に戻り、家族に報告した。戦力外通告から約4時間後。球団幹部に「お願いします」と受諾の意思を伝え、12年の現役生活にピリオドを打った。

 ユニホームを脱ぐ決断はつらかったが、夢への道も開けた。「プロ入り前から指導者になることが夢だったんです。当時はアマチュアの指導者になりたかった。プロとアマの違いはあっても、目標だった指導者へのスタートが切れる」。東北学院大時代に将来を見据え、教員免許を取得していた。今季のシーズン終盤にはひそかに「アマチュアの指導資格回復研修の日程も調べていました」という。今年5月には右手有鈎(ゆうこう)骨の除去手術を受けた。捕手陣には炭谷を筆頭に、ともに3年目を迎えた岡田と森の若手が名を連ね、2年連続で1軍の舞台を踏めなかったことも引退を決めた理由だった。

 理想の指導者像がある。仙台育英時代の恩師・佐々木順一朗監督だ。「監督の影響で指導者という目標ができた。押しつけるのではなく、自分たちで考えてやることの重要性を学んだ」。恩師に引退とコーチ就任を報告すると、電話越しに「良かったじゃないか」と明るい声が返ってきた。

 西武第2球場で行われた若手中心の秋季キャンプから指導を始めている。「全てが手探りですね。まだ“初心者マーク”が付いていますから。これからは主力を脅かす若い選手を育てたい」。34歳の新米コーチにとって「第二の野球人生」は希望に満ちあふれている。 (重光 晋太郎)

 ◆星 孝典(ほし・たかのり)1982年(昭57)5月4日、宮城県名取市生まれの34歳。小学1年から「下増田ブラックホークス」で野球を始める。仙台育英では99、00年に2年連続で夏の甲子園に出場。東北学院大では2学年下の岸(西武から楽天にFA移籍)とバッテリーを組んだ。04年ドラフト6巡目で巨人に入団。11年5月に金銭トレードで西武に移籍した。1メートル75、82キロ。右投げ右打ち。

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