侍ジャパン 「自己判断」で問われるベンチと選手の信頼関係

[ 2016年11月23日 10:00 ]

 侍ジャパンの強化試合で世界の野球の細かさに改めて驚きを感じた。12、13日に行われたオランダ戦(東京ドーム)。2戦ともに延長戦に突入する熱戦となり、タイブレークにもつれ込んだ。目を見張ったのは、連勝した日本というより、むしろオランダだった。

 12日のオランダの10回表の攻撃。無死一、二塁から始まったが、1ボールから打者ヴァンダーミーアは打ち上げて、中飛に倒れた。ヤクルト、ロッテでプレーしたヘンスリー・ミューレン監督は「サインはバントだったが、日本の(守備陣の)チャージが速かったから打者が判断して打ちにいった」と語った。日本からすれば、一塁手と三塁手が同時に猛チャージをかけ、遊撃手は三塁ベース、二塁手は一塁ベースをカバーする「ブルドッグ」といわれるギャンブルシフトの圧力が勝ったといえるが、私は、監督の「バント」のサインに対し、選手判断で切り替える野球が即席の代表チームで行われていたことに感心した。ミューレン監督は「グラウンドで動いているのは選手。もし自己判断をしてほしくない時は、そういう指示を出す」と意に介さなかった。

 チャージの位置を見てバスターに切り替えるのは、リーグ戦を戦う所属チームではよくあることだ。日本シリーズ第2戦(マツダ)では、広島の菊池がバントのサインを自己判断でバスターに切り替え、決勝点を奪った。選手の自己判断は、成功すれば意外性を生むが、失敗すれば、サインの不徹底と責められる。普段からベンチと選手の信頼関係が問われる。

 もちろん、強化試合で失敗のリスクを問われることはないし、そこまでミューレン監督が突き詰めて考えているかは定かではない。だが、日本を考えてみる。もし、小久保監督がバントのサインを出した時に、選手が自己判断で切り替える勇気、決断力はあるか。ベンチは状況によってサインの「徹底度」を指示できるか。期待の大きさから「失敗できない」との意識が先立つと、何もできなくなる。

 13年大会の準決勝プエルトリコ戦の敗因とされる重盗失敗は、チームの決め事と、選手の自主性のグレーゾンで生まれたプレーだったと認識している。来年3月のWBCまで練習試合を含め実戦は5試合の予定。首脳陣と選手間で突き詰める機会はかぎられている。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2016年11月23日のニュース