「打撃の神様」の特別展で知ったダントツの日本一監督輩出県

[ 2016年11月20日 09:40 ]

野球殿堂博物館に展示されている川上哲治氏の赤バット

 【永瀬郷太郎のGOOD LUCK!】戦後間もないころに使ったバットらしい。塗料が剥げ、すっかり色褪せている。でも、目を近づけてよく見てみると、かすかに朱色が…。「打撃の神様」の赤バットである。

 東京ドーム内にある野球殿堂博物館殿堂ホールで11月15日から熊本応援企画「川上哲治特別展」が開かれている。史上初の通算2000安打を達成し、監督としては巨人を不滅のV9に導いた川上さん。トロフィーや優勝カップなどめぼしい記念品は1999年3月、生まれ故郷の熊本県人吉市に完成した川上哲治記念球場に寄贈した。

 ところが、2013年10月に93歳で亡くなった後、遺族が遺品を整理していたら、現役時代の永久欠番16のユニホーム、2000安打達成記念の絵皿や73年V9ナインのサインパネルなど貴重なお宝が続々出てきたという。そこで長男の貴光(よしてる)さんが31点を同博物館に寄贈。以前から所蔵していた記念の品と合わせ、今回の企画展が実現した。

 川上さんと同じ人吉出身のV9戦士・末次利光さん、熊本工の後輩の島田雄二さん(元東映、巨人)や前田益穂さん(元中日、東京・ロッテ)さんらが姿を見せたオープンセレモニー。来場していた関係者から「熊本出身の監督が日本シリーズの4分の1を優勝してるんだよ」という話を聞いた。

 たしかに日本一11回の川上さんに続いて、現在スポニチ本紙で連載中の「我が道」の登場している古葉竹識さんも広島で3回。古葉さんは川上さんのことを「同じ熊本出身の神様のような人。少しでも近づきたいと思った」と話していたなあ。さらに伊東勤(現ロッテ監督)に秋山幸二…。

 こりゃあ調べるしかない。というわけで、悪戦苦闘した結果は次の通り。

<熊本県=17>

 川上哲治(巨人)11

 古葉竹識(広島)3

 秋山幸二(ソフトバンク)2

 伊東勤(西武)1

<香川県=9>

 水原茂(巨人、東映)5

 三原脩(西鉄、大洋)4

<岐阜県=6>

 森祇晶(西武)6

<広島県=5>

 広岡達朗(ヤクルト、西武)3

 鶴岡一人(南海)2

<京都府=4>

 野村克也(ヤクルト)3

 吉田義男(阪神)1

<福岡県=4>

 原辰徳(巨人)3

 仰木彬(オリックス)1

<徳島県=3>

 上田利治(阪急)3

<東京都=3>

 王貞治(ダイエー)2

 栗山英樹(日本ハム)1

<愛知県=2>

 金田正一(ロッテ)1

 工藤公康(ソフトバンク)1

<愛媛県=2>

 藤田元司(巨人)2

<千葉県=2>

 長嶋茂雄(巨人)2

<鳥取県=1>

 湯浅禎夫(毎日)1

<兵庫県=1>

 天知俊一(中日)1

<佐賀県=1>

 権藤博(横浜)1

<北海道=1>

 若松勉(ヤクルト)1

<秋田県=1>

 落合博満(中日)1

<群馬県=1>

 渡辺久信(西武)1

<宮崎県=1>

 西村徳文(ロッテ)1

<岡山県=1>

 星野仙一(楽天)1

<米国=2>

 ボビー・バレンタイン(ロッテ)1

 トレイ・ヒルマン(日本ハム)1

 日本シリーズは2リーグ制になった1950年から始まり、今年で67回。そのうちの17回だから、確かに熊本県出身監督が4分の1、日本一監督になっている。

 回数は川上さん一人でトップなのに、4人という人数もダントツ。改めて敬意を表したい。

 「川上哲治特別展」は来年1月15日まで開催。熊本地震の被災地に贈る義援金箱も設置されています。(特別編集委員)

 ◆永瀬 郷太郎(ながせ・ごうたろう)1955年、岡山市生まれ。早大卒。東京の予備校に通っていた74年10月、冬期講習申し込みの列を離れて後楽園球場に走り、長嶋茂雄最後の雄姿に涙する。82年の巨人を皮切りにもっぱら野球担当。還暦を過ぎ、学生時代の仲間と「バンドやろうぜ」で盛り上がっている。

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