試合に出なくても貢献できる…鶴岡一成が重宝された理由

[ 2016年11月15日 10:00 ]

9月に引退会見を行い、21年間のプロ生活に別れを告げた鶴岡一成

 プロ野球選手が引退後、セカンドキャリアで球界に携わる仕事に就く割合は一握り。阪神でプロ21年間の現役生活に別れを告げた鶴岡一成は、来年のことが決まっていない。「野球に育ててもらったし、恩返ししたい気持ちがある。ただそれができる人もいれば、できない人もいる。まあ、ゆっくり考えるよ」。

 横浜(現DeNA)―巨人―DeNA―阪神とセ・リーグの3球団を渡り歩いた。08年途中に横浜から巨人にトレードされ、11年オフに巨人からDeNAにFA移籍。13年オフ、FA移籍してきた久保康の人的補償で阪神に移籍した。「こんな野球人生珍しいやろ」と苦笑いする。絶対的な正捕手だった期間は短い。だから移籍を繰り返したともいえる。だが、有事に備えた「2番手捕手」でこれほど頼もしい存在はいない。巨人、阪神に在籍時は日本シリーズで先発マスクをかぶった。

 横浜で谷繁、巨人で阿部という大黒柱がいた。出番が限られる鶴岡は、「自分はこの1試合で終わるかもしれない」と常に危機感を持っていた。ベンチで配球を研究し、投手のわずかな変化も見逃さない。今季限りで現役引退した元DeNAの三浦は10年近く共にプレー。一塁ベンチから投球フォームを観察すると、状態が悪い時は左足を上げた立ち姿で右の臀部(でんぶ)が数十センチ一塁側に傾いていたことに気づいた。「ケツが倒れているから直してください」と助言。試合に出なくても、チームのためにできることはある。重宝される理由があった。

 投手の能力を最大限に引き出すため、接し方にも神経を使う。向こうっ気が強いDeNA・井納、三嶋は意識的に怒ることで修正点を気づかせた。並外れた練習量で、マウンドでの修正能力が高い巨人・内海には、余計な言葉を掛けなかった。阪神では藤浪とバッテリーを組むことが多く、通算で19勝6敗、勝率・760。だが、自身のリードを称えられることを否定した。「あれぐらいの投手は誰が捕手でも勝てる。本人には言ったけど、制球を気にしてまとまろうとしていた。インステップで右打者が怖がるのがいいところ。球が暴れてこその藤浪晋太郎だよ」。

 捕手への思い入れは誰よりも強い。昨年の阪神―DeNA戦(甲子園)。暴投が決勝点になり、阪神が勝った。試合後の会食で、鶴岡は相手捕手の嶺井を気に掛けていた。「あの子、ええキャッチャーになれると思うんよ。負けて自分のミスだと背負ってないかな…。電話番号知ってる?」。面識はないが、球団の垣根を越えて良い捕手に育ってほしいという強い思いだった。嶺井は後日、「鶴岡さんが僕のことを気に掛けてくれて。びっくりしました」と感激の面持ちだった。

 洞察力と人間観察に優れ、若手捕手に助言を惜しまない。鶴岡はバッテリーコーチが天職ではないかと思う。「どうやろうね。でも、2番手捕手だからここまでできた。その経験は役立つと思う。自分を必要としてくれる場所があればありがたい」。その場所は近い将来、必ずあると思う。(記者コラム・平尾 類)

 ≪12・8トークショー≫鶴岡氏が12月8日に東京都港区の芝浦ハウスで「引退記念トークショー」を開催。3球団を渡り歩いた現役生活21年を振り返る。前売り券を発売中。詳細はhttp://boost-inc.jp/bfm/まで。

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