松坂世代の豪腕・新垣 大歓声に後押しされトライアウトで3者凡退

[ 2016年11月13日 09:30 ]

12球団合同トライアウトで力投する新垣

 12日。秋晴れの甲子園。松坂世代の一人、ヤクルト・新垣は、一際大きな歓声を浴びていた。3人の打者と対戦し、3者凡退に斬った。帽子を取り、大粒の汗をぬぐった。のぞかせた笑顔は、大歓声に照れ笑いを浮かべているように思えた。

 「後悔のない投球をするだけ。それでダメだったら仕方がないよ」

 そう話していたのは約1週間前。昨季は2年ぶり白星を含む3勝も、今季の登板はわずか6試合。1勝2敗、防御率6・67に終わった。プロ14年目。厳しさは分かっている。本人にとって戦力外通告は想定内、むしろ予想通り想定通りだった。

 14年夏にトレードでソフトバンクからヤクルトに移籍。13年は1勝止まり。オフの契約更改の席上でトレード志願もしていた。盤石な投手陣を誇るソフトバンクから投手陣が不足していたヤクルトに移籍したが、本来の能力からすれば期待通りの活躍はできなかった。

 ホークス時代には斉藤、杉内、和田、そして新垣で先発4本柱を形成。圧倒的な強さを誇った。和田、杉内は同学年。同じ松坂世代同士は「お互いに意識していたし、それが切磋琢磨になった」。和田はメジャーを経て今季、古巣に復帰。夫人同士が姉妹で義兄弟になる杉内は巨人にFA移籍。現在は右股関節手術からの復活を目指している。

 小学生時代から骨折を繰り返すなど、1メートル88の長身に対し、下半身が弱かった。若いうちは上体の力で補えたが、年齢とともに投球フォームにズレが生じた。おおらかな性格から「いかにも沖縄人」と称されることもあったが、非常に繊細な性格も持ち主でもあった。次第に制球に苦しみ、マウンド上では打者よりも自分自身と戦っていた。

 トライアウトには同じく松坂世代のDeNA・久保の姿もあった。老練な投球術は健在だ。新垣にも全盛期のような球速や球威はないが、培ってきた経験値を備えている。「ここまで来れたのは家族のおかげ。家族もいるし、迷惑はかけられない」。約1週間前には、こうも言っていた。声はかかるのか。それとも「引退」となるのか。その決断を見守りたい。(記者コラム・川手 達矢)

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2016年11月13日のニュース