野球という仕事 ルシアノ・フェルナンドは楽天に輝く太陽になる

[ 2016年11月4日 10:00 ]

グリップをチェックする楽天のルシアノ・フェルナンド

 【君島圭介のスポーツと人間】日本の在留外国人は昨年223万人を超え、過去最高を記録した。日本人と結婚し、子どもは日本国籍になるケースも増えた。そういう子どもたちが各界で頭角を現し始めた。とくにスポーツ界は野球のダルビッシュ有、陸上のケンブリッジ飛鳥など現役で活躍するスターが多い。

 楽天のルシアノ・フェルナンドが、オコエ瑠偉に声をかけた。「もっとウエートやらないともったいないよ。アフリカ系はラテン系より体が強いんだからさ」。ウエートトレーニングの重要性を真剣に説いている。

 ブラジル国籍のフェルナンドは5歳で群馬県太田市に移住。桐生一(群馬)、白鴎大(栃木)で強打のスラッガーとして注目を浴び、14年ドラフト4位で楽天に入団した。日本の学校に3年以上在籍し、外国人枠の制約を受けないが「僕は外国人に負けられない」。今季は1軍で4試合の出場に止まったが、2軍では74試合で14本塁打の長打力を誇る。

 梨田監督が「誰とでも明るく接し、全体的におとなしいチームの雰囲気を変える」と認める存在感。日本語は完ぺき。母国語のポルトガル語のほかにスペイン語、英語を操る。父方の曽祖母は日本人だがルックスはラテン系だ。浅黒い肌に真っ白い歯が印象的なイケメンだが、笑顔の裏には苦労もあった。

 「いじめはありましたよ、もちろん。僕みたいな人間は必ず遭う」。明るい過去ばかりではない。肌の色が違う。言葉がおかしい。排他的な集団行動に苦しめられた。フットサルチームにも入っていたが、さまざまな理由で続けられなかった。いじめに強く反発し、悪者にされたこともあった。

 小学4年生のとき、少年野球チームの練習をフェンス越しに見ていた。1週間通った末、「打ってみるか」と指導者に誘われた。「面白いようにバットにボールが当たって飛んだ」。すぐに夢中になった。野球が居心地のいい場所になった。

 「僕に言わせればあいつは日本人。僕とは違う」というが、オコエを見守る目は優しい。「彼は(ルーツが)アフリカ、ナイジェリアなんだというのを強く出す。それが凄い」と感心する。在留外国人や親が外国人なら日本の社会で立ち位置をつくるのは難しい。

 「そんな子は『自分は不利だ』と思うかもしれない。だけど(ルーツを)誇りにしてほしい。僕らの姿を見て、ハーフでもクオーターでも外国人でも出来るんだと分かってほしい」

 フェルナンドは秋季練習で最後までバットを振り、走り続けた。ラテン系であることを意識し、明るく振る舞う。それも「誇り」。その人間としての強さがチームに必要とされるときが必ず来る。そう信じている。(専門委員)

 ◆君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年6月29日、福島県生まれ。東京五輪男子マラソン銅メダリストの円谷幸吉は高校の大先輩。学生時代からスポーツ紙で原稿運びのアルバイトを始め、スポーツ報道との関わりは四半世紀を超える。現在はプロ野球遊軍記者。サッカー、ボクシング、マリンスポーツなど広い取材経験が宝。

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