佐藤家の合言葉は「次は貴規の番」 NPB復帰へ3年連続トライアウト受験

[ 2016年11月2日 10:55 ]

福島ホープスで後期は2番を務めた貴規

 「僕、クビになりました!」。若者はリビングに入るなり、家主の佐藤均さんにそうあいさつした。10月某日、ヤクルト・由規の仙台市内の実家。あいさつしたのは、今季ルートインBCリーグの福島で由規の弟・貴規のチームメートだった小林祐人内野手だ。

 貴規が元同僚らを連れて3人で突然、帰宅したのは夜10時ころ。均さんは「これからどうするんだ?」と親身になって小林の話を聞き、母・美也さんは手早く食事を用意する。3人は均さんの好物という焼きそばと焼きたてのパンにむしゃぶりつき、今後について語り合った。いつも温かさがあふれる佐藤家のリビングが凍り付いたのは、2年前の11月だった。

 3人兄弟の末弟で外野手の貴規は14年のシーズン後、育成選手としてプレーしていたヤクルトを戦力外となった。貴規は「もう野球はやりたくない」と同年オフに一度、引退を決意した。均さんは猛反対。互いに譲らない。長兄の史規(ひさのり)さんが「どうにもならない雰囲気だった」と振り返る危機を救ったのは、13年に右肩の手術を受け復帰途上だった由規だ。電話で「両親に夢を見させてやってほしい。俺は今、投げられないけど、俺を奮い立たせてほしい」と語りかけ、貴規は翻意。福島入りした。

 由規が5年ぶりに1軍マウンドに立ったのが7月。以来、佐藤家では「次は貴規の番だ」が合言葉となった。貴規は昨季リーグトップの98安打、今季は同2位の94安打。ヤクルト時代に悩まされた送球難も、福島での地道な反復練習や史規さんの献身的なサポートにより改善された。まだ23歳。NPB復帰を目指し、今月12日に12球団合同トライアウトを受ける。3年連続の挑戦となる。

 昨年は7打数4安打をマークしたが、声はかからなかった。トライアウトが狭き門であることは分かっている。「もう一度はい上がって、大観衆の前で自分がプレーしている姿をファンの方々に見せたい。今まで僕に関わってくれた全ての人々に見せたい」。もう迷いはない。自分が野球を大好きなことを、家族が気づかせてくれたから。(記者コラム・大林 幹雄)

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