後輩・田中正義と舞台は違えど…社会人で飛躍した全足利ク・石崎の歩み

[ 2016年10月28日 10:50 ]

9月の全日本クラブ野球選手権・ゴールデンリバース戦で7回1安打6奪三振の力投をみせた全足利クラブの石崎啓太投手
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 プロ野球ドラフト会議が20日に行われ、注目の創価大・田中正義投手(22)は5球団競合の末、ソフトバンクに1位指名された。同じく創価大の池田隆英投手(22)は楽天が2位指名。笑顔でプロへの意気込みを語る2人の姿を映像で見ながら、ある一人の投手のことが頭に浮かんだ。創価高、創価大で田中と池田の1学年先輩にあたる全足利クラブ(栃木)の新人右腕、石崎啓太投手(23)である。

 高校、大学時代は無名の存在だった。高3夏の西東京大会では背番号19でベンチ入りも、チームは3回戦敗退。石崎は1回戦で2番手で投げただけで最後の夏を終えた。創価大では1年春にリーグ戦初登板も、1年秋に右肘じん帯を断裂して手術。2年夏に復帰も3年秋まで登板機会に恵まれなかった。4年春に6季ぶりにリーグ戦登板も、同年秋は登板なし。「大学では3、4試合しか投げていないと思う」。この時期、田中と池田はプロのスカウトから熱視線を浴びつつあったが、石崎はリーグ戦未勝利のまま卒業。今季から地元・栃木の全足利クラブに加入した。

 そんな右腕が存在感を示したのは、6月の都市対抗北関東予選・日立製作所戦だ。先発して6回途中まで3失点に抑える力投。終盤に救援陣が崩れて、チームは1―11(8回コールド)で大敗したが、企業チーム相手に先発投手として最低限の仕事を果たした。

 7回コールド勝ちした9月の全日本クラブ野球選手権初戦・ゴールデンリバース戦では、先発して7回2死まで無安打投球。あと1死で無安打無得点試合(7回参考)達成というところで内野安打を打たれ快挙を逃したが、7回1安打で大会完封一番乗り。「ノーヒットノーランは意識していた。できたらやろうと思っていたけど、記録がなくなってもチームの勝ちのために切り替えて投げた」。準々決勝・山口防府ベースボールクラブ戦では4番手で登板し、チームはサヨナラ勝ち。ビッグ開発ベースボールクラブとの準決勝は4―5で敗れたが、3試合で計250球を投げ抜いた。大学時代、控えに甘んじていた投手とは思えない獅子奮迅の活躍だった。

 日中は足利市内の建設会社で営業職として働き、夕方からチームの練習に参加する。平日の練習は2時間程度。シーズン中は社業よりも練習に打ち込める企業チームとは対照的な環境だが「主力として投げさせてもらっているのはうれしい」と充実感がにじむ。

 田中と池田がプロの世界へ飛び込む17年。社会人2年目を迎える石崎にとっても、3年ぶりの都市対抗出場、そして04年以来13年ぶりのクラブ日本一を実現させるため、重要なシーズンとなる。後輩と舞台は違えど、自分なりの歩幅で歩んでいく。そんな姿もまた、石崎らしい。(記者コラム・原田 真奈子)

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2016年10月28日のニュース