昔は弱かったのに

[ 2016年10月28日 09:10 ]

ワールドシリーズ第2戦に勝利し、ハイタッチで喜ぶカブスの選手たち(AP)
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】クリーブランド・インディアンスとシカゴ・カブスがワールドシリーズで対戦している。このカード、野球映画好きにとっては実に感慨深い。思い出すのは「メジャーリーグ」と「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」。ともに1989年公開の作品だ。

 「メジャーリーグ」はコメディーとスポーツのおいしいところをメガ盛りにしたような娯楽映画の王道を行く。古豪だが最近の成績はさっぱしという設定のインディアンスにポンコツながら個性豊かな選手が集結して地区優勝へ…という、ベッタベタにお約束の展開だ。実際のところ80年代のインディアンスは、まさに体たらく状態。

 ロケは当時の本拠地、ミュニシパル・スタジアムで行われた。元オールスター選手だが現在は膝の故障でメロメロのベテラン捕手を演じたのがトム・ベレンジャー。やたらと球だけは速いが、行き先はボールに聞いてくれという刑務所上がりの若手投手はチャーリー・シーン。売り出し中だったウェズリー・スナイプスは口と足と守備こそ達者だが、打撃はからっきし駄目というお調子者の外野手。今思い出すだけで笑ってしまう、絵に描いたような寄せ集め軍団だ。

 やる気のない女性オーナーはチーム低迷を理由にマイアミ移転をたくらんでいた。シーズン後半にその意図を知らされた選手たちがクラブハウスでミーティングを開く場面がいい。ベレンジャーが「残りのクソ試合を全部勝とうぜ!」と気勢を上げ、快進撃が始まる。レギュラーシーズン終了時にはヤンキースと同率首位に立ち(そんなにうまくいくかと突っ込むのはヤボ)、運命の1試合プレーオフへ。試合結果はもう分かるでしょ?

 「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」は野球とは関係ないのだけど、1985年から2015年(昨年ですね)にタイムトラベルした主人公のマイケル・J・フォックスが「カブス、4連勝でワールドシリーズ制覇」という街頭のニュースビジョンを見て腰を抜かす場面に大笑いした。

 当時のカブスといえば人気こそ高いが、典型的な弱小球団。日本で言えば低迷期の阪神みたいな存在だ。そのカブスがワールドシリーズ優勝?しかもスイープで?いくら30年後といっても冗談でしょ?…と、野球好きの笑いを誘うシーン。

 映画公開の翌年、両本拠地を取材で訪れたことがある。ミュニシパル・スタジアムのクラブハウスは映画よりかなり狭かった(スタジオ撮影だから当たり前)とか、カブスのリグレー・フィールドに集う観衆はどことなく阪神ファンに似ていたとか、仕事そっちのけで観察に熱中していた。

 インディアンスVSカブス。30年前は箸にも棒にもかからなかったお荷物球団同士の激突。日本シリーズも楽しんでいるが、あちらの頂上決戦にも心が躍る。誰か映画化してくれないだろうか。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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2016年10月28日のニュース