ストッパー受難の2016シーズン 失敗許されない守護神の宿命

[ 2016年10月27日 10:45 ]

広島・中崎
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 2016年はストッパー受難のシーズンだった。日本シリーズでも、広島には中崎がいるが、日本ハムは抑え不在のまま戦っている。マーティンが故障で離脱したとはいえ、その助っ人右腕も絶対的存在ではなかった。シリーズ進出を決めたパ・リーグのCSファイナルステージ第5戦でエース大谷が救援したことが、それを象徴している。

 3球団のストッパーを例に挙げ、今季と昨季の成績を比較した。

 DeNA・山崎康

 16年 2勝5敗、33セーブ、防御率3・59

 15年 2勝4敗、37セーブ、防御率1・92

 楽天・松井裕

 16年 1勝4敗、30セーブ、防御率3・32

 15年 3勝2敗、33セーブ、防御率0・87

 ロッテ・西野

 16年 3勝6敗、21セーブ、防御率3・35

 15年 1勝2敗、34セーブ、防御率1・83

 成績を著しく下げていることが、ひと目で分かる。対戦相手は攻略に向けて、球種やコースなどの配球を徹底して研究してくる。わずかな投球フォームのクセも見逃さない。さらに最終回を迎え、凄まじいエネルギーでぶつかってくる。

 先発なら週に1回投げ、5回2失点でも役割を果たせたことになるが、抑えは1失点も許されない。さらに投げない日でもブルペンで肩をつくり、緊張感も保っていないといけない。肉体的、そして精神的な疲労度。抑えを務めた者にしか、その過酷さは分からない。

 日々の勝敗を左右するポジション。日米通算で381セーブを挙げた「大魔神」こと、佐々木主浩(元横浜=現DeNA)に抑えの役割について聞くと、こう言われた。

 「他の選手、監督、コーチ、球団職員、全ての人の人生を背負っている。その家族の生活も、背負っている」

 もちろん、佐々木は150キロを超える剛速球にウイニングショットのフォークがあるから抑えられた。加えて、これだけの覚悟があったから成功できたのだと思った。

 失敗が許されないストッパーの宿命。巨人で通算159勝を挙げ、斎藤雅樹、桑田真澄と並ぶ三本柱として一時代を築いた槙原寛己(現スポニチ本紙評論家)の言葉は、とても重かった。現役終盤に抑えを任され、そのプレッシャーをこう表現した。

 「抑えは10回投げて、9回成功しても1回でも失敗したら、マスコミに叩かれる」

 当時の巨人は「ミスター」こと、長嶋茂雄が監督を務め、その注目度は今とは比べものにはならなかった。たった1度の失敗を、翌日のスポーツ紙の1面で取り上げられる。抑えて当たり前。失敗の方が目立った。

 巨人の沢村は37セーブを挙げ、最多セーブのタイトルを獲得した。だが目立ったのは、シーズン後半で精彩を欠いた姿だった。8度のセーブ失敗。2桁勝利がかかっていたエース菅野や内海の白星を消したこともあった。8月7日の首位・広島との一戦。同一カード3連戦3連勝で3・5ゲーム差に詰め寄るはずが、1点リードの9回に逆転サヨナラ負けを喫した。広島を独走させる要因となった試合。抑え転向2年目で壁にぶつかった。

 抑えから先発に戻り、復活を遂げた日本ハム・増井のような例もある。栗山監督の決断は正しかった。先発を続けたい者もいるし、抑えを続けたい者もいるだろう。ただ、パフォーマンスが低下しているなら、何かを変えないといけない。(野球コラム・飯塚 荒太)

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2016年10月27日のニュース