【内田雅也の追球CS編】広島はファン一体の「家族」 ホームの大声援を味方に晴れ舞台へ

[ 2016年10月16日 08:55 ]

セ・リーグCSファイナルS第4戦 ( 2016年10月15日    マツダ )

<広・D>黒田(右から3人目)は新井(右から2人目)らとともに記念写真で笑顔を見せる
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 広島は「家族」だという。先代オーナーの松田耕平氏が「カープという球団は、家族じゃ」と繰り返していた。

 家族は家族を思う。ともに助け合い、幸せになりたいと願う。阪急、近鉄を球団初優勝に導いた西本幸雄氏が「監督の仕事はみんなを幸せにすることや」と語っていたのを思う。新人を預かれば「親御さんの苦労を思う」と文字通り親身になった。同じく、長い低迷期を乗り越えた広島も家族的な団結が源にある。

 この日先制打を放った新井は阪神時代「チームは家族。4番打者は頼れる父親のような存在であるべき」と語っていた。1回裏1死一、二塁。低めボール気味を「強引でしたが」と引っ張った打撃は父親らしい。前夜零敗の重苦しさを解き、大量6点につながった。

 ここで言う家族とはファンも含んでいる。西本氏は「ファンが盛り上げてくれるよう、背中で声を聞きながら指揮を執った」と話していた。ましてや広島は親会社を持たぬ市民球団。熱い応援が強力な後押しとなる。

 前DeNA監督の中畑清氏(スポニチ本紙評論家)がCSファーストステージ(東京ドーム)でDeNAが勝てた要因を<スタンドが生み出す「音の効果」がすごかった>と本紙に書いていた。ファイナルステージでは広島がその効果を受けたのだ。

 天才プロ棋士の羽生善治氏が五感のうち<一番感情に強く訴えるのは聴覚、つまり音>と書いている=『迷いながら、強くなる』(三笠書房)=。大音量の声援が家族の心を揺さぶっていた。

 だから、CS突破のインタビューで緒方監督は満員観衆に向け「おめでとうございまーす。日本シリーズも一緒に戦いましょう」と呼びかけた。

 シリーズは幾万の家族が集うマツダスタジアムから始まる。幸せを願う家族が最高の晴れ舞台に立つ。 (編集委員)

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