「神の足」引退 最後はけん制死「鈴木尚広らしい」

[ 2016年10月14日 05:30 ]

引退会見で笑顔を見せ質問に答える鈴木尚
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 巨人の鈴木尚広外野手(38)が13日、東京都内のホテルで記者会見を行い、今季限りで引退することを表明した。足のスペシャリストとして通算228盗塁をマーク。今季は引き際を考えながらプレーを続けたことを明かし「心技体」の「心」の部分を引退の理由に挙げた。競争の激しい名門球団で20年間プレーし「神の足」と呼ばれた。今後は未定だが、指導者として球界に復帰することを目標に置いた。

 実直な性格がにじみ出た。鈴木は「シーズンが続いている中、私の去就でお騒がせしてすいません」と謝罪し、「“すっきりした”、という一言に尽きる。もう悔いはありません」と語った。

 プロ20年目の今季。シーズン中から引退の二文字と闘っていたことを明かした。38歳になった足のスペシャリストは「体力、技術的には上がっています。でも、心が離れていった」と言う。試合終盤の緊迫した場面での代走。失敗は許されない一発勝負では「心技体、どれか一つが欠けたら勝負はできない」。引き際だった。現役最後のプレーはDeNAに敗れた10日のCSファーストS。同点の9回に代走でけん制死となり「なかなかしないことを最後にしてしまった。でも、鈴木尚広らしい」と振り返った。

 試合後、東京ドームから福島県相馬市の実家に帰省し、両親に引退を伝えた。「もう一年やれ」と反対した父も、最後は「もう20年やったから勘弁してください」という思いを受け入れてくれた。翌日には高橋監督らに報告。昨年、監督推薦で初の球宴出場に導いてくれた原前監督には「野球人生において重要な欠かせない方」と感謝した。

 相馬(福島)から96年ドラフト4位で入団。故障に苦しみ、1年間に3度も骨折し「骨折君」と呼ばれたこともあった。成長できたのは誰もが認める「準備」だ。全体練習前のアーリーワークに時間を割いた。走塁技術を磨き、相手投手の研究も重ねた。200盗塁以上の選手ではトップの成功率・829。功労者に対し、球団は11月23日のファン感謝祭で引退セレモニーを企画している。

 盗塁の魅力とは。鈴木は「一瞬のために準備をして、勝負する。一番輝ける場所」と言った。 (川手 達矢)

 ◆鈴木 尚広(すずき・たかひろ)1978年(昭53)4月27日、福島県生まれの38歳。中学では陸上部に所属。相馬高で野球を始め、96年ドラフト4位で巨人入団。プロ6年目の02年4月2日の中日戦(ナゴヤドーム)の9回に代走で1軍初出場を果たし、08年ゴールデングラブ賞受賞。14年4月29日のヤクルト戦(東京ドーム)で通算200盗塁を達成した。今季は10盗塁で12年連続2桁盗塁を記録。1メートル80、78キロ。右投げ両打ち。

 ≪巨人生え抜き20年以上は7人目≫鈴木は巨人入団20年目で現役生活にピリオド。巨人の生え抜き選手で20年以上在籍したのは王の22年を筆頭に鈴木は7人目。外野手としては柴田と並ぶ最多年数。なお、鈴木の現役引退により、チームの生え抜き最多年数は加藤の18年(99~16年)。

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