広島・野村が見せた「勝てる投手」の本領「間」の感覚が絶妙

[ 2016年10月14日 08:10 ]

セ・リーグ クライマックスシリーズ ( 2016年10月13日    マツダ )

<広・D>6回無死一塁、DeNA・ロペスを併殺打に仕留めた広島先発・野村
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 【内田雅也の追球】広島先発の野村はプレートを外し、球審にボール交換を要求した。4回表1死一塁、ロペスを1ボール2ストライクと追い込み、変化球をファウルされた直後だった。

 「実戦から遠ざかると走者を背負った場面での感覚が鈍くなる。あえて間(ま)を取ったりしました」と試合後に語ったシーンである。

 シーズン最終登板の9月24日ヤクルト戦から「中18日」。だが、間の感覚は忘れていなかった。

 「投手は詩人のごとし」とピュリツァー賞4度の詩人ロバート・フロストが書いている。「投手も詩人もそれぞれの間(モーメント)を持つ。この間(インターバル)こそが手ごわいのだ」。プレー再開。ニューボールで投げた直球で一邪飛に取って2死とした。

 筒香は鈍い当たりの右前打で一、二塁。初のピンチもあわてなかった。梶谷に変化球を外角に配したが4球とも外れた。ストライクを欲しがり、適時打を許したりはしない。満塁としたが、倉本へ「四球後の初球」を慎重に投げて一ゴロ。無失点でしのいだ。

 牛島和彦氏(スポニチ本紙評論家)が横浜(現DeNA)監督に就任した04年、投手陣に伝えたのは「四球を与えても、満塁にしても、本塁さえ与えなければ失点にはならない」という粘りの姿勢だった。野村も「意味ある四球」でしのいだのだ。

 この回は先頭桑原の一ゴロをエルドレッドがトンネルしたのが始まり。投手は味方がミスした後を踏ん張る。すると野手も恩義に感じる。投打の信頼関係を高める。江夏豊氏の言う「エラーを巡る間柄」ができる。

 今季、野村の非自責点(つまり失策絡みの失点)はわずか4点とセ・リーグで4番目に少ない。最多勝、勝率第1位の「勝てる投手」の本領を見た。(スポニチ編集委員)

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2016年10月14日のニュース