「超変革」で本当に変えたいものは?金本監督は「体」と言うが…

[ 2016年10月6日 08:35 ]

甲子園球場正面入口ののぼり。スローガン「超変革」には「Fighting Spirit」の副題が付いている
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 【内田雅也の追球】阪神電鉄本社でオーナー報告会を取材し、阪神電車で野田から甲子園まで乗った。球場正面に来るとパタパタと音がする。台風接近で風が出て、外壁に掛けられた幟(のぼり)がはためいていた。

 幟は監督や選手たちの写真の下に、スローガンのロゴがあしらわれている。「超変革」の筆文字は目立つが、小さな英文字が分かりづらい。「Fighting Spirit」である。1年前、新監督に金本知憲を迎えて掲げたスローガンは、この2語が一緒になったメッセージだった。

 「監督が中心となり、超変革は進んでいるが……」とシーズン中、球団社長・四藤慶一郎が漏らした言葉を思い出した。苦しい戦いが続いた夏場だった。「ファイティング・スピリットの方はどうだろうか。あの言葉を何と訳すか。どう浸透させていくか。こちらの方が難題かもしれない」

 直訳すれば闘争心、敢闘精神……といったところか。「超変革」の際、金本やフロント陣がチームに植え付けたかった心である。いや、変革するために必要な心である。

 モラロジー(道徳科学)の提唱者、廣池(ひろいけ)千九郎(ちくろう)の格言に「まず精神を造り、次に形式を造る」がある。道徳的精神を造ったうえで事業を行わないと失敗する。遠回りでも心の重要性を説く。

 星稜高名誉監督・山下智茂が使う言葉に「心が変われば――」がある。「心が変われば行動が変わる/行動が変われば習慣が変わる/習慣が変われば人格が変わる/人格が変われば運命が変わる」。元はヒンズー教の教えだそうだ。

 野村克也もよく引用した。阪神監督として3年連続最下位と失敗したのは心を変えられなかったからだと述懐している。

 その阪神監督最終年の2001年9月、手帳に<今、タイガースに必要な精神>として1番目に<キャン・ドゥ精神(やれば出来るじゃないか)=「勝てた!」「勝てるじゃないか!」の希望と自信>と記した。12年に出した自著『阪神タイガース暗黒時代再び』(宝島社新書)で明かしている。後を受けた星野仙一の成功はまさにこの精神の変革が大きかった。

 この日、金本は2年目に向け、秋季キャンプで「まずは体。技術はその次」と話した。ただし、本当に変えたいのは、心技体のうちの心だろう。その先に超変革の成功がある。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

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2016年10月6日のニュース