契約金50万円からメジャーへ…元グラウンドキーパーのアメリカンドリーム

[ 2016年9月11日 09:45 ]

夢のメジャー昇格を勝ち取ったパドレスのスミス(AP)

 9月7日。1人の若者のアメリカンドリームが叶った。大リーグでは9月からベンチ入り枠が25人から40人に拡大され、マイナー選手がメジャーデビューを果たす季節でもある。その中でも異色の経歴を持つのがパドレスの救援右腕ジェーク・スミス投手(26)だ。

 スミスは何と元グラウンドキーパー。その右腕が、7日のレッドソックス戦でメジャー初のマウンドに上がった。2―5の8回。初球を通算231本塁打のラミレスに左翼席に運ばれる手痛い洗礼も浴びたが、1回を2安打1失点。悲願のマウンドに立った右腕は「3年間働いた(球場クルーの)仲間たちからたくさんのテキストメッセージや電話をもらったよ。(大リーグの)クラブハウスに足を踏み入れるだけでも夢が叶った」と夢見心地の14球だった。

 地元紙によると、スミスは09年から夏季限定でジャイアンツ傘下1Aオーガスタの整備係のボランティアをしていた。11年に所属していた大学野球部のコーチから非公式のオーディションをセッティングされ、その投球を見たオーガスタの投手コーチが右腕の可能性に注目。同年にジ軍がドラフト48巡目(全体1467番目)で指名したが、契約金はわずか5000ドル(約51万5000円)。それでもスミスは自分の夢を追った。

 ルーキーリーグ、1Aで経験を積み、15年オフにはジ軍の40人枠に入ったが、今春キャンプでは肩の故障もあり、メジャーデビューはならず。今季ジ軍傘下2Aでも22試合に救援登板して2勝1敗、防御率7・08と調子が上がらなかった。だが、7月にパ軍へ移籍し、肩の休養期間をつくったこともあり、最速96マイル(約154キロ)の速球が95マイル(約153キロ)程度まで復活。傘下2Aで6試合で0勝0敗1セーブ、防御率1・59とアピール。3Aを飛び越えて夢のメジャー昇格を勝ち取った。

 パ軍のアンディ・グリーン監督も「ここまでたどり着くのに信じられない道のりだ」と驚嘆するアメリカンドリーム。12日(日本時間13日)からはサンフランシスコでの古巣ジ軍3連戦。自身を発掘してくれたジ軍相手にマウンドに立てば、また思い出深い登板になるだろう。(記者コラム・東尾 洋樹)

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2016年9月11日のニュース