五輪レベルの俊足 メジャーで注目“機械の目でしかアウトにできない男”

[ 2016年9月7日 10:10 ]

8月30日のフィリーズ戦で二盗を決めたナショナルズのターナー(AP)

 14年に導入された大リーグのチャレンジ制度。審判の判定に異議を申し立て、リプレー検証を要求できるシステムだ。今季は5日時点で1264回のチャレンジが行われているが、約40%の503回がタッチプレーに関するもの。このうちほぼ半分が盗塁の際のアウト、セーフだという。人間の目はごまかせても、テクノロジーの目はごまかせない。その影響もあるのか、大リーグでは盗塁数が全体的に減少傾向にある。

 ここまでナ・リーグはレッズの韋駄天、ハミルトンが58個でトップだが、ア・リーグ最多はインディアンスのデービスで35個。シーズン残り1カ月で40を何とか超える程度だろう。昨季のア・リーグ盗塁王はアストロズのアルテューベで38個。ストライキでシーズンが8月半ばに打ち切られた94年を除けば、30台での盗塁王は53年ぶりのことだった。今季の大リーグ全体の1試合平均の盗塁数は0・52個。これも73年以降では最低だった昨季と全く同じ数字だ。

 そんな中、新たな走り屋が注目を集めている。ナショナルズのトレー・ターナー外野手(23)。昨季メジャーデビューし、27試合に出場。今季は7月からメジャーに定着すると、1番打者として8月は打率・357でナ・リーグの月間新人最優秀選手に選ばれた。

 大リーグの関係者の間では「今、メジャーで一番足が速い。五輪選手レベル」とも言われている。大学時代から俊足として名をはせ、13年には日米大学野球の米国代表としても来日し、大瀬良(広島)や山崎福(オリックス)とも対戦している。パドレスにドラフト1巡目(全体13番)で指名され、昨季途中にトレードでナショナルズに移籍した。ここまで48試合の出場ながら20盗塁。162試合に換算すると、67盗塁となる。

 注目すべきは3個の盗塁死。これは全てリプレー検証で判定がひっくり返ったものだ。もしチャレンジ制度がなければ、今季は23盗塁で失敗0ということになる。3回のリプレー検証も非常に際どいタイミング。8月23日のオリオールズ戦では2度、リプレー検証でアウトになった。2つ目は捕手からの送球が一塁方向にそれたが、ヘッドスライディングを試みたターナーのスパイクにちょうどグラブが当たったもの。おそらく人間の目では判定できないアウトだった。リプレー検証について、ターナーはこんなことを話している。

 「正しい判定をしてくれるので、野球界にとってはいいことだろう。でも、俊足ランナーにとっては数インチの世界で勝負している。時にはフラストレーションを感じることだってあるよ」

 ナショナルズは現在、地区首位を独走しており、ポストシーズン進出は確実。「機械の目」でしかアウトにできない男、ターナーの走りに注目したい。(記者コラム・甘利 陽一)

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