山田が貫く盗塁スタイル

[ 2016年9月1日 09:30 ]

リーグ最多の29盗塁を決めているヤクルト・山田

 【宮入徹の記録の風景】興味深い数字がある。ヤクルト・山田哲人の盗塁に関するものだ。山田はここまでリーグ最多の29盗塁を決めている。その内訳を見ると全て二塁盗塁。失敗は2度あって、こちらも二塁での盗塁死になっている。実は昨年34盗塁を決め盗塁王を獲得した時もオール二盗だった。山田は12年にプロデビューを果たしたが、ここまで通算87盗塁はすべて二盗、13盗塁死は二盗死のみ。つまり入団以来、三盗と本盗は1度も試みていないことになる。

 両リーグの盗塁内訳を出すと31日現在で、二盗857、三盗23、本盗14。三盗は全盗塁の2・6%に過ぎない。プロ野球全体が、リスク回避に向かい、三盗は「奇策」になりつつあるといえるのかもしれない。

 かつての俊足選手は三塁盗塁にも貪欲だった。プロ野球最多の通算1065盗塁を記録した阪急の福本は三盗の通算が149。生涯盗塁の14%を占めた。シーズン106盗塁のプロ野球記録を達成した72年は三盗が23。今季両リーグの三盗合計と同じなのだから隔世の感がある。

 その福本の連続盗塁王を13年でストップさせたのが近鉄の大石大二郎。大石は三塁盗塁では圧倒的といえる職人芸を披露した。通算74度三盗を試み、失敗はわずか3度。成功率は実に・959に達した。さらに凄いのは84年から97年に引退するまで45度連続で成功。熟練の技術を保ったままユニホームを脱いだ。

 現在大リーグのマーリンズで活躍するイチローはオリックス時代に通算199盗塁をマークし、うち三盗は22。97年5月28日西武戦では0―0の8回に三盗に成功。その後、相手投手の暴投で決勝のホームを踏んだ。

 山田の場合、自身の盗塁感覚と、後続打者への配慮が二盗勝負につながっているのだろう。通算盗塁成功率は・870と精度はピカ一。三盗の封印がいつ解かれるのか、楽しみに待ちたい。(専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から25回連続で資料説明役として出席。自身も大の野球好きで、都北園高校時代は軟式野球部の主将を務め、東京都大会優勝1回、準優勝1回。

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