作新 54年ぶりV 今井152キロ涙の志願完投、天国の祖父に届け

[ 2016年8月22日 05:30 ]

<北海・作新学院>54年ぶり2度目の優勝を果たしジャンプして喜ぶ作新学院・今井

第98回全国高校野球選手権最終日・決勝 作新学院7―1北海

(8月21日 甲子園)
 半世紀を超え、日本一に返り咲いた。決勝戦で、作新学院(栃木)が7―1で北海(南北海道)を下し、史上初の春夏連覇を達成した1962年以来54年ぶり2度目の優勝を果たした。打線の援護を受けた今井達也投手(3年)が自己最速タイの152キロをマークして、1失点完投。参加3874校の頂点に立った。栃木勢の優勝も62年の同校以来。OBの萩野公介がリオデジャネイロ五輪の競泳で金メダルを獲得して沸いた同校に、再び歓喜をもたらした。

 今井はただ一人、三塁ベンチにも頭を下げてから一塁側アルプス席へと走りだした。54年ぶりの頂点。あいさつを終えると身をかがめて泣きじゃくり、お立ち台には目を腫らしたまま上がった。

 「あまり優勝した実感はないです。メンバー外の3年生が涙を流していたので感極まりました」

 2回、鈴木に先制左前打を浴びて今大会初めてリードを許した。しかし、なお2死一、二塁で遊撃への痛烈なゴロを山本主将がダイビングキャッチ。間一髪一塁でアウトにしてスイッチが入った。3回は2死から「3アウト目を三振に取ればチームが勢いづく」と、4番・佐藤大を自己最速タイの152キロで見逃し三振で仕留めた。エースの思いに応えた打線は直後の4回、打者11人攻撃で一挙5得点して逆転に成功。疲労を考慮して当初は6回までの登板予定だったが、5回終了後に小針崇宏監督から「行けるか」と聞かれて「完投します」と即答。追加点を許さず132球を投げきり、優勝の瞬間は両手を突き上げて何度も跳びはねた。

 昨夏は栃木大会でベンチ入りも甲子園はメンバーから外れた。この挫折が転機となった。実家から片道1時間かけて自転車通学していたが、合宿所に入寮。体づくりに時間を割いたことで、体重は昨秋から4キロ増。72キロとなり安定感が増した。

 4月に祖父・敏夫さん(享年79)が死去。6回1死一、二塁ではバックスクリーンを見て祖父の顔を思い出した。「おじいちゃんや応援してくれる人のためにも投げきる」。得意のカットボールで後続を断った。3回戦以降は控えの藤沼に預けていた祖父の遺骨を付けたネックレス。決勝戦は身に着けて臨んだ。栃木に戻ったら墓参りし「甲子園の土をお供えしたい」と話した。

 大先輩の“怪物”江川卓氏でも手が届かなかった全国の頂点に立った今井は、今大会全5試合で150キロ台を計測した。決勝で150キロ台をマークしたのは12年夏の大阪桐蔭・藤浪(現阪神)以来だ。計41イニングで奪三振、防御率1・10。616球の熱投でドラフト上位候補に躍り出た。進路については「あまり考えてない」としながらも「できるだけ上のレベルで野球を続けていきたい」とプロの舞台を見据えた。

 「奇跡と思うぐらい信じられない」。史上初の春夏連覇から54年の夏。古豪に再び日本一をもたらしたエースは夢心地だった。  (青木 貴紀)

 ▼作新学院・山本主将 勝利への執念が勝ったと思う。全員が一つになった。練習は裏切らない。(リオ五輪でOBの)萩野さんが金メダルを獲りましたし、僕らも負けてられない気持ちでした。

 ▼作新学院・入江(大会3本塁打)3回もダイヤモンドを回ることはめったにない。本当に気持ちよかった。甲子園は不思議な力があって応援で実力以上のものが出た。

 ≪夏54年ぶり優勝は最長ブランクV≫作新学院は春夏連覇した62年以来、54年ぶり2度目の優勝。夏の複数回優勝は昨年の東海大相模に次ぎ20校目(7位タイ)、春夏通算3度の優勝は22校目(14位タイ)。夏の54年ぶり優勝は、昨年東海大相模の45年ぶりを上回る最長ブランク優勝となった。これで決勝は3戦全勝。春夏決勝初登場からの最多連勝は広島商と大阪桐蔭の5連勝で、3連勝以上は8校目だ。

 ≪チーム全試合で150キロ以上は史上初≫作新学院・今井が決勝で自己最速タイの152キロをマーク。夏の決勝では12年大阪桐蔭・藤浪の153キロに次ぎ、05年駒大苫小牧・田中の150キロと合わせ決勝3人目の大台だった。また今井は全5試合で150キロ以上を計測。藤浪は登板した4試合でマークも欠場が1試合あり、決勝までのチーム全試合で150キロ以上は今井が初めて。

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