【内田雅也の追球】下手なうちは「工夫」と「激しさ」を

[ 2016年8月17日 09:40 ]

<神・広>4回1死、江越はジョンソンの前に空振り三振に倒れる

セ・リーグ 阪神0―5広島

(8月16日 京セラD)
 14日に81歳で他界した西鉄(現西武)黄金期の強打者、スポニチ本紙評論家だった豊田泰光は各界と広い交友があった。国鉄(現ヤクルト)に移籍した1963年(昭和38)春、文芸評論家・小林秀雄と酒席をともにしている。小林の『考えるヒント』(文春文庫)にある。

 スランプについて豊田が語ったそうだ。「若い選手達(たち)が、近頃はスランプだなどとぬかしたら、この馬鹿(ばか)やろうということになるのさ」

 小林はさすがの分析を行っている。<その道の上手にならなければ、スランプの真意は解からない。下手なうちなら、未(いま)だ上手になる道はいくらでもある。上手になる工夫をすれば済む事で、話は楽だ。工夫の極まるところ、スランプという得態(えたい)のしれない病気が現れるとは妙な事である>。

 技量が未熟なうちに打てないのならば<工夫をすれば済む>のである。

 問題は、この夜もまた広島先発のクリス・ジョンソンに沈黙した阪神打線だ。7回2安打無得点で、昨年から何と7連敗とは情けなくなる。

 若手や中堅が並ぶ打線である。小林が指摘した「工夫」はどこにいったのか。天国に召した豊田の厳しく、愛情深い辛口が聞こえるようだ。

 たとえば、京セラドーム・プレスルームでオーナー付シニアアドバイザー(SA)の和田豊のテレビ解説が聞こえた。3三振の江越大賀に「投手もクイックなどいろんなモーションで投げてくる。それに合わせる工夫がいる」と話していた。

 もちろん、リーグ最多勝を争う好投手に好投されれば、なかなか打てるものではない。

 では、技術的な工夫に加え、精神論と言うか、姿勢を書きたい。

 いわゆる「併殺破壊」の猛烈スライディングで恐れられた70~80年代の名選手、ハル・マクレー(ロイヤルズなど)が語っている。「うまい選手になれないなら、激しくいくしかない」。現役時代も監督になってからも味方投手に激しい内角攻めを指示した。

 左腕ジョンソンの投球の特徴は角度だ。かつて日本では「十字火球」と訳したクロスファイアで右打者の膝元、胸元を攻めてくる。阪神の右打者はこの球に足や腰が退けてはいなかったか。

 一方で本塁打、犠飛の後の5回表、能見篤史の内角攻め3連投にも、踏み込んで左前適時打した新井貴浩がまぶしく映った。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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