【キヨシスタイル】自分とダブる柔道・康生監督の男泣き

[ 2016年8月16日 10:40 ]

日本男子柔道の井上康生監督

 勝って流す男の涙って格別だな。重みが違う。リオ五輪で金2、銀1、銅4と全階級でメダルを獲得した柔道男子日本代表。井上康生監督の男泣きに、指導者のロマンを感じたね。

 銀2、銅2に終わった4年前のロンドン五輪。井上監督はコーチとして金0という初めての屈辱を味わい、どん底で監督を引き継いだ。日本柔道はこのままじゃ浮上できない。「一本勝ち」にこだわる伝統は守りつつ、新しいスタイルを導入。本格的なウエートトレーニングを取り入れ、世界の強豪の映像を集めて研究したという。

 去年まで4年間、DeNAの監督をやらせてもらった自分とダブる。まず「最後まで絶対諦めない」という意識付けから入り、いろんな起用をして柱となる選手をつくっていった。ある程度の形はできたけど、私は勝って涙を流すことがなかった。勝つことが全てじゃないと思っていた。でも、指導者は選手に結果を出させて初めて評価される。井上監督の涙が改めてそう教えてくれたような気がする。

 私が一番凄いと思うのは4つの銅メダル。誰もが金を目指している。決勝に駒を進める前に敗れて大きな目標を失うと、人間は弱くなりがちだ。それなのに一度負けた選手が気持ちを切り替え、最後につかみ取ったメダル。勝ったからじゃなくて、諦めなかった。井上監督の男泣きの原点はそこにあったんじゃないかな。

 2004年のアテネ五輪を思い出す。病に倒れた長嶋監督に代わってヘッド兼打撃コーチとして野球日本代表の指揮を執らせてもらった。予選リーグ6勝1敗で1位通過しながら準決勝でオーストラリアに0―1。ショックで声も出なかった。それでも選手は切り替え、3位決定戦でカナダを11―2で破り、銅メダルを獲得してくれた。

 「予選から全勝で金」を目標にしていたから大きな声では言えなかったけど、私の中では金メダル。最後の最後までチームが心を一つにして最高の野球ができたんだから。帰国後、誰かが言ってくれた。「“銅”って“金”と“同”じって書くんだよ」。そう、4つの銅メダルこそリオで完全復活した日本男子柔道の神髄だと思う。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

続きを表示

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

2016年8月16日のニュース