巨人・杉内 見えてきた復活への課題 追い求める「直球」との戦い

[ 2016年8月13日 12:05 ]

巨人・杉内

 厳しい夕日が照りつけていた9日のジャイアンツ球場。マウンドでは巨人の杉内が、懸命に腕を振っていた。うなずいたり、ときには不思議そうに首をかしげたり。一球ずつ。丁寧に。追い求める感覚を確認しながら。滴る汗を何度も拭った。

 「まだ真っすぐが求めているものにはなっていない。ベース上での伸びというのかな、切れが足りないと思います」

 右股関節の形成手術から4度目の実戦登板となったイースタン・リーグの日本ハム戦(ジャイアンツ球場)。5回86球を投げ、5安打2失点だった。現段階では結果ではなく内容重視だが、直球の最速は136キロとまずまずであった。いよいよ残された課題は、感覚上のものになってきた。

 ただし、これが、最も重要で難しい。もともと剛速球ではなく、切れで勝負してきたタイプ。140キロ前後の直球でも、打者はバットに当てるのがやっと。そこに鋭いスライダーとチェンジアップを織り交ぜ、通算142勝を築いてきた。ところが、直球の現状は「打者に簡単に当てられてしまう」。初めての大きな壁にぶつかっている。

 原因はいくつか考えられるという。術後、患部に負担をかけないように走り込みをやめた。代わりにエアロバイクで下半身を強化。体と向き合った結果の新たな試みだが「これまではずっと、走り込んでつくった下半身で投げてきた。プロに入る前、野球を始めたときからそうだった。下半身の粘りが足りないのかもしれない」。まだ手探り。もう一つの要素は無意識のうちに生まれる患部への負担の軽減。本来は踏み出した右足に体重を乗せ、ボールをリリースしたいが「無意識のうちに体重を乗せるのをためらっているのかもしれない」と分析している。

 模索しながら5回、80球をクリア。今後は7回、100球をメドに、肩のスタミナの仕上げに入る。と同時に、内容も必要になってくる。それが真っすぐとの戦いだ。リハビリ途中には「やっぱり真っすぐ。そこが戻らなかったら、新しいスタイルを考えないといけない」と漏らしていた。大手術を経たいま、求める姿は昔の自分なのか、それとも新しい形なのか…。

 「早く1軍に呼んでもらえる状態に持っていきたい」。残りは2カ月。逆転優勝を目指す1軍の輪に加わるためにも、巨人のエースナンバーは直球の質を追い求める。(川手 達矢)

続きを表示

2016年8月13日のニュース