市尼崎エース平林 183球熱投及ばず 延長10回力尽く

[ 2016年8月10日 05:30 ]

<市尼崎・八戸学院光星>延長10回二死満塁、田城(左)は決勝となる一塁強襲タイムリーを放つ。右はベースカバーに入る市尼崎・平林

第98回全国高校野球選手権第3日・1回戦 市尼崎4―5八戸学院光星

(8月9日 甲子園)
 1回戦4試合があり、33年ぶり出場の市尼崎(兵庫)は延長10回の末に八戸学院光星(青森)に惜敗。エース平林弘人投手(3年)が見せた183球の力投は及ばなかった。横浜(神奈川)は今秋ドラフト候補の152キロ右腕・藤平尚真投手(3年)が6回2/3を被安打6の13奪三振、1失点の快投。2回戦では、150キロ左腕・寺島成輝投手(3年)擁する履正社(大阪)との激突が決まった。

 兵庫県勢春夏通算300勝も、市制100周年の祝い星もかなわなくても、市尼崎・平林は笑顔を忘れなかった。1点を追う10回2死二塁。フルカウントから空振り三振に倒れた。夢のような2時間14分が終わり、晴れやかな表情で敗者の列に並んだ。

 「最後は応援してくれた人に感謝したかった。自分で何度もチャンスをつぶしたけど、笑うと決めていた」

 今大会初の延長戦で183球を投げ抜いた。選抜出場した長田、明石商を撃破して33年ぶりの出場を決めた兵庫大会では再試合を含む7試合57回を力投。右肘に張りが残り、投球を再開したのは4日前だった。前日には右手中指に血マメができ、爪が割れた。右肘に痛み止めを打って挑んだ晴れ舞台。初回の1点を懸命に守って迎えた中盤6回、7安打を集められて4点を奪われた。

 7回は2死無走者から下位打線の連打で反撃。9回には2点差を追いついた。仲間がくれた延長10回のマウンドで最後は力尽きた。池山(現楽天コーチ)を擁して初出場した83年時、2年生エースだった宮長貞行さん(50)は主将だった清水稔さん(51)と一緒にアルプス席から声援を送り、「あのときも粘り強いチームだった」と変わらない“イチアマ魂”に胸を熱くした。

 悔しい決勝点には内野失策が絡んだ。「この堅い守備がなかったら自分がここまで来られることはなかった」。平林は共に戦い抜いた仲間をねぎらい、耳に届いた地元の熱い声援を胸に刻んだ。「一球一球、スタンドがざわつくのが楽しくて。甲子園はいい場所でした」。目は次第に真っ赤になっても最後まで笑った。 (水口 隆博)

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2016年8月10日のニュース