イチロー「最善の起用法」に見た首脳陣との信頼関係

[ 2016年7月29日 08:20 ]

27日には出番のなかったマーリンズのイチロー(AP)

 練習のためグラウンドに足を一歩踏み入れた瞬間から、大挙して詰め掛けている報道陣のカメラが一挙手一投足に向けられる。開場と同時に、日本人のファンが観客席の前方に陣取り、熱のこもった視線を注がれる。試合では一番の大歓声。本拠地マーリンズ・パークで、メジャー通算3000安打到達を目前にしているマーリンズのイチローを取り巻く環境だ。

 そんな状況下、27日フィリーズ戦の試合後にドン・マッティングリー監督が語った内容が、多少の話題を呼んだ。大記録にあと3本としたまま、本拠地10連戦は残り4試合に。今後の起用について聞かれた指揮官は「これまでチームとしての最善を考えて使い、結果が出ている。皆がその瞬間(3000安打)を見たいのは分かっているが、相手との相性などを無視して起用することはない」と発言し、特別扱いはしない意向を示した。ホームでの記録到達は微妙となった形だが、プレーオフ争いの真っただ中。私個人としては至って妥当な考えだと感じた。

 試合前、来季のオールスター戦についての会見に出席したデービッド・サムソン球団社長は、背番号51の心中を代弁するように言った。「彼とも話をしているが、彼はチームの一員として勝つことに集中している。3000安打は彼にとって通過点」。2人の言葉を通して垣間見えたのは、首脳陣、球団とイチローとの厚い信頼関係だ。大差がついたため15試合ぶりに出場機会がなく終わった試合の終盤、ベンチでイチローと首脳陣が何度か言葉を交わす場面があった。あくまで想像だが、ここでも出場に関して何らかの意思確認はあったのではないか。

 28日(日本時間29日)のカージナルス戦では、薬物規定違反による80試合の出場停止処分が明けたゴードンが復帰予定。昨季、首位打者とリーグ最多安打、盗塁王のタイトルを獲得した二塁手の「指定席」は1番で、今後のイチローの出場試合数や打席数への影響は少なくない。現在マイアミで取材中の私も、ここでの到達を見届けることを切に願う一人である。ただ、やはりイチローらしく、勝つために立つ打席で歴史的瞬間を迎えることを楽しみにしたい。(記者コラム・大林 幹雄)

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2016年7月29日のニュース