広島・福井 109日ぶり2勝 25年ぶりVへ“後半戦キーマン”

[ 2016年7月29日 05:30 ]

<巨・広>7回を5安打無失点で2勝目の福井

セ・リーグ 広島4―0巨人

(7月28日 京セラD)
 広島にとっては大事な一戦だった。負ければ今季初の3連敗、逆に巨人は3連勝となる。眼下の敵を勢いづかせる可能性もあった上に、相手先発は球界のエースと言っていい菅野だった。その菅野に、福井が投げ勝った。久しぶりの登板で重圧もあったとは思うが、あっぱれな投球だった。よく辛抱して、7回までゼロで抑えた。1勝でも、大きな1勝になった。
 福井にすれば、チームキャプテンとして開幕を迎えながら、思うような成績を残せなかった。再び1軍に帰って来て、結果を出した。次回以降もこういう投球をしてくれたら、優勝に向けてチームにもエンジンがかかってくる。
 会沢もうまくリードした。7回2死無走者から長野にフルカウントになった時、コーナーに構えるのではなく、大きく構えた。真っすぐがど真ん中に来て、空振りで三振を取れた。会沢は石原と比べられるが、最初からリードが上手な捕手はいない。辛口の採点が多いが、これからも勉強してほしい。 (本紙評論家)

 シーズン佳境前の厳しい夏場に、悲願のVを目指すチームに、頼もしい戦力が帰って来た。負ければ今季初の3連敗となる一戦で、今季一番の投球を披露して巨人打線をねじ伏せた福井。4月10日、阪神戦以来の白星に最高の笑顔でおどけた。

 「きょう勝ったのはデカいッスね。菅野と福井でしょ。いつも緊張してダメなことが多いので、緊張するものだ…と思って腕を振りました」

 戦前の予想を覆した快勝劇。序盤3イニングはピンチの連続だった。ただ「四球ではなく安打だったので、切り替えられた」と振り返った通り、自分の投球を信じて腕を振り、要所では相手打者を沈黙させた。最大の見せ場は2点リードの6回だ。

 先頭・坂本の中前打と阿部への四球で招いた無死一、二塁。だが、福井は動じない。村田、ギャレットを「以前より球速が上がった」(畝投手コーチ)フォークで封じると、山本は自慢の直球で右飛に斬った。結果を欲しがり、力んで自滅した以前の姿は消えていた。

 5月8日、DeNA戦(マツダ)で4回途中5失点KO。翌9日に出場選手登録を外れた。「素直にチームを応援できない自分がいました」。溢れる才能のぶつけ所を見失っていた時。右腕にアドバイスを送ったのが黒田だ。直球を磨くこと、そしてもう1つ―。

 「いい時の映像を作ってもらい、試合前に見て登板してみたら…と」

 黒田自身もメンタル面を整えるのに実践する手法。オレは大丈夫だ。自信を持って投げれば結果は出る―。2軍戦で既に取り入れ、「効果は感じています」。菅野に投げ勝った7回零封ショーが何よりの証しだった。

 「広輔の2発も大きいけど、きょうはやっぱり福井でしょ。菅野相手にいい投球をしてくれた。彼自身にもチームにも、この1勝は大きいよ」

 緒方監督の賛辞は最大級だった。オープン戦で防御率0・45と快投を演じながら、開幕後に壁にぶち当たった右腕。6連戦が続く夏場を前に、昨季9勝の本格派が戦列復帰した意義は大きい。

 「チームの輪の中に入りたかった。次も(先発機会が)あれば、しっかり投げたい。しっかり投げないと意味がない」

 壁を乗り越え、心身が強くなった28歳。V貢献への巻き返しが始まる。(江尾 卓也)

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2016年7月29日のニュース