日米通算2000安打の陰で…“右ゴロの名手”福留の幻の美技

[ 2016年7月26日 08:45 ]

6月25日の広島戦で日米通算2000安打を達成した阪神・福留

 滅多にお目にかかれないプレーを、惜しくも見損なった。6月25日の広島対阪神戦(マツダ)での話だ。0―0の3回無死満塁の大ピンチで、ルナの当たりは右前への強いライナー。前めに守っていた福留の手前でワンバウンドしたが、この名手は、捕球するやいなやホームめがけて矢のような送球を繰り出した。

 「三塁走者がタッチアップで戻りかけたのが見えていたんでね」

 タイミングもスピードもコントロールも抜群。そのまま捕手が捕球していれば、本塁フォースアウトで満塁でのライトゴロになっていたと思う。ただ残念ながら一塁のゴメスがそれを“感じて”おらず、送球をカット。美技は幻に終わった。

 「ああいう場面ではいつも狙っているし、アウトになっていたかもとは思うけどね」

 知る人ぞ知る「右ゴロ」の名手だ。今季も4月7日の巨人戦(東京ドーム)で平良を仕留めている。相手が右打ちの投手とあって、右翼線寄りの浅めに守備位置を取り、狙い通りに弾んできたゴロを素早く一塁へ。楽々と刺した。04年には1シーズンに2度も記録しており、特にDeNAの三浦は何度も福留の「特技」の餌食になっている。捕球の上手さや肩の強さだけでなく、何よりも凄いのが予測と準備。中日時代の同僚の山本昌氏が「孝介(福留)は本当に“野球脳”が良い」と話していたのが、こういうところなのだろう。

 冒頭の広島戦では、史上6人目の日米通算2000安打も達成。ただ、39歳の今でも打力だけではなく外野の守備力でもチームトップだ。9年ぶりの受賞となった昨季を含め、ゴールデングラブ賞は5回。打撃では晴れて名球会入りしたが、もしも入会条件に守備力を評価する部門があったとしても、クリアできる選手だと思う。

 打つ方でも守る方でも全盛期のようなスピードやパワーはないかもしれない。ただ、それを補って余りある技術と読み、そして貫禄と余裕が今の福留にはある。若手が多いチームが最下位に低迷する中、ただ一人、別格のオーラを漂わす背番号8。PL学園時代から怪物と騒がれてきた早熟の天才が、不惑を前にしてますます円熟味を増してきている。(記者コラム・山添 晴治)

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2016年7月26日のニュース