黒田に投げ勝った田口 「あの夏」から3年 ライバルとの“再戦”は…

[ 2016年7月14日 11:18 ]

13年夏の全国高校野球選手権広島大会決勝で投手戦を繰り広げた、広島新庄時代の田口(左)瀬戸内時代の山岡と

 3年がたった。球児は大人への階段を上り、マウンドで白い歯を見せることもなくなった。それでも愛嬌のある目元は変わらない。巨人・田口が14日、前半戦最終戦の広島戦で前夜19安打の強打線を抑え、200勝に王手を懸けた黒田に投げ勝った。地元広島でウイニングボールを手にポーズを決める姿に、「あの夏」を思い出した。

 1球投げるごとに笑い、マウンドにいることを心から楽しむ姿が忘れられない。2試合299球、広島新庄の田口は一貫して表情が豊かだった。2013年夏、全国高校野球選手権広島大会決勝を取材する幸運に恵まれた。24イニングで決着した、瀬戸内・山岡(現東京ガス)との究極の投手戦――。

 7月28日、第1ラウンド。2人はしまなみ球場の電光掲示板に「0」を10個ずつ並べ、11回に入って表示がリセットされた後も、15回まで「0」以外の数字が入ることを許さなかった。山岡は9回1死から一、二塁間を緩い当たりで割られた1安打のみで15回を163球、15奪三振で完投。「楽しくて、15回が早かった」と涼しげだった。

 一方の田口は13安打を浴び、何度も徳俵まで押されながら、19三振を奪って213球を投げ抜いた。圧巻は無死三塁から2敬遠で満塁策をとった13回。遊ゴロ、スリーバントスクイズ失敗、空振り三振で究極の窮地を脱した。試合後のあいさつで2人は体を寄せた。「ナイスピッチ。打たせてくれよ~」と田口。山岡は「また、こんな試合をやろうな」と言った。

 休養日を挟んだ30日の引き分け再試合。山岡は田口より多い4度の得点圏を招きながら、130球で9回完封を果たした。夏の地方大会決勝で初戦、再試合の両方を完封したのは全国初のケースだった。田口が堅固な城塞を破られたのは8回。23イニング目に与えた1点で、1枚の甲子園行きの切符を山岡に渡した。

 下級生時から県下に名を知らしめ、互いに意識し合ってきた2人。最終決戦を制した山岡は「どうせなら、もう1回、再試合をしてもいいなと考えていました」と振り返った。田口は「山岡の存在に感謝です。同世代に山岡がいたから、僕も球が速くなったし、変化球で三振が取れるようになった」と、最後まですがすがしかった。

 田口は今年、開幕から巨人の先発ローテーションで回り、5勝、リーグ5位の防御率2・89と奮闘。入団時から体重が10キロ増え、見ていてあの頃にはない投球の力感が伝わってくる。山岡は今秋ドラフト上位候補の呼び声も高く、15日開幕の都市対抗野球で社会人の頂点を目指す。2人の歩む道がまたクロスする日が、待ち遠しい。(記者コラム・和田 裕司)

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