【群馬】利根商80歳指揮官 涙の1勝「今日ほど緊張したゲームない」

[ 2016年7月11日 05:30 ]

<松井田・利根商>試合後に相手ベンチに一礼する豊田監督(中)

第98回全国高校野球選手権・群馬大会2回戦 利根商7―0松井田

(7月10日 高崎城南)
 第98回全国高校野球選手権大会(8月7日から15日間、甲子園)の地方大会は10日、33大会で280試合が行われた。群馬大会では昨秋に就任した80歳の豊田義夫監督率いる利根商が、松井田に7―0で7回コールド勝ち。同校では夏の初陣で初勝利を飾り、感涙した。また、熊本大会は今年4月の熊本地震で被災した藤崎台県営球場で開会式が行われた。11日は全国26大会226試合が行われる。

 思わず、言葉に詰まった。スタンドに勝利のあいさつを終えた利根商・豊田義夫監督は「学校と部員たちに感謝ですね。この年まで高校野球をやらせてもらって…。大阪や甲子園でもまれてきたが、今日ほど緊張したゲームはない。うれしい気持ちでいっぱい」。目には光るものがあった。

 近大付(大阪)で3度、センバツ出場に導いた名将は、傘寿を迎えても重圧を感じていた。昨年9月に就任したが、昨秋、今春の県大会はいずれも初戦敗退。キャッチボールの重要性を説き、自らノックバットを握った。基本に忠実な集団に鍛え上げ、夏に臨んだ。

 初回1死三塁からは手堅くスクイズで先制。これでナインの緊張がほぐれた。「“取るべきは取る”というのが私のモットー」と攻撃の手を緩めず、打線は10安打で7得点。7回コールド発進を決めた。投げては2年生左腕・木村が5回まで無安打投球。わずか1安打、自己最多の13奪三振で完封し「今日は気持ちが入った」と笑みを浮かべた。

 60歳以上、年が離れた指揮官は積極的にナインと対話することを心掛けている。試合中にも個別にアドバイスを受けた木村は「普段はマナーや礼儀に厳しい」と笑う。荒川主将は「いつも熱心に指導してくれる。関西弁なので、たまに何言っているのか分からない時がありますけど…。監督に1勝をプレゼントできて良かった」と感謝した。

 若い頃に比べて体力は落ちたが、気力は充実している。「ユニホームに着替えると、シャンとする」と豊田監督。自身と同校初の夏の甲子園へ。80歳監督は孫のような球児とともに夏を満喫する。(川島 毅洋)

 ◆豊田 義夫(とよだ・よしお)1935年(昭10)12月25日、大阪府生まれの80歳。近大付を卒業後、会社員を経て56年に近大付のコーチに就任。65年に監督となり、センバツに3度出場(67、71、75年)。近大福山、近大新宮、社会人のクラブチーム「八尾ベースボールクラブ」、近大泉州などで監督を歴任、昨年9月に利根商監督に就任した。

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