由規ただいま149キロ 6回途中6失点も「幸せだな」

[ 2016年7月10日 05:35 ]

<ヤ・中>6回無死満塁、森野に押し出し四球を与え降板した由規(左)は野村バッテリーコーチに労われる

セ・リーグ ヤクルト2-8中日

(7月9日 神宮)
 午後11時半すぎ。ヤクルト・由規はナインの最後にクラブハウスを後にした。残っていたファンに丁寧にサインをする。車に乗り込む前に、かみしめるように言った。「心の底から楽しいと思った。マウンドに上がった時は夢の中にいるようだった」。帰ってきた。神宮に、1軍のマウンドに戻ってきた。全身に残る疲労感と充実感が、何とも心地良かった。

 「初球は真っすぐと決めていた」。右肩手術を乗り越え、11年9月3日の巨人戦(神宮)以来1771日ぶりの1軍マウンド。初回、先頭・大島を迎えると大きく深呼吸。雨上がりの神宮の空気を存分に吸い込んだ。「あの時が一番ウルッときて…。投げられる喜びをかみしめました。幸せだな、と」。初球。万感の思いを込めた一球は146キロをマークした。

 5回まで毎回の7安打を浴びて3失点。6回には無死から3連打を許し、満塁で代打・森野に7球オール直球勝負を挑んだ。6球目に最速149キロ。しかし最後は押し出し四球を与え、降板した。5回0/3を10安打6失点で5年ぶりの黒星。「悔しい。やっぱり勝負の世界は勝たないと意味がない」。投手としての本能にも火が付いた。

 13年4月に右肩にメスを入れた。長かったリハビリ。前に進んだと思えば立ち止まり、再び後退し…。普段は弱音を吐かない由規だが、兄・史規さん(29)の前で一度だけ漏らしたことがある。「どこまで頑張ればいいんだろう。頑張れ頑張れって言われるけど…。頑張るのがつらい」。兄は「あいつが悩んでいた気持ちを考えると何も言えなかった」という。以来、佐藤家には決めごとができた。由規に「頑張ろう」と言うのは禁句。史規さんは父・均さん(55)らと家族で観戦し、メンバー発表で弟の名前が呼ばれた時から既に涙を流していた。

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2016年7月10日のニュース