「阪神の打者はチャンスがピンチのようだ」やんちゃぶり表に出せ

[ 2016年7月10日 11:11 ]

<神・広>2回無死満塁、西岡は三塁ゴロに倒れる

セ・リーグ 阪神1-7広島

(7月9日 甲子園)
 【内田雅也の追球】試合中、甲子園の記者席や関係者通路や喫煙室で顔を合わせた阪神OBやフロント、他球団編成担当者から同じ話を聞いた。「阪神の打者を見ていると、チャンスがピンチのようだ」

 2回裏、無死満塁無得点。3回裏、無死三塁無得点。絶好機を続けて逃した。

 無死満塁は点が入りづらいのか。統計上、プロ野球での得点期待値(イニング終了まで平均何点入るか)は無死満塁が最も高く、近年は2・2~2・4点で推移する。無得点に終わった時の印象が強いのだろう。

 たとえば、1979年(昭和54)の日本シリーズ、近鉄―広島最終第7戦(大阪)の9回裏がある。1点を追う近鉄は無死満塁としながら、江夏豊の前に無得点に終わり日本一を逃した。「江夏の21球」である。

 近鉄監督で「非運の闘将」となった西本幸雄は本紙評論家時代「無死満塁は最初の打者が肝心だ」と語っていた。「無死で打席に入る最初の打者が何とか三塁走者を還すことができると大量点になる。ところが最初の打者が失敗すると、後々の打者は重圧がかかってくる」。本塁は封殺プレー。1死になれば併殺の不安もある。

 その西本は無死で走者が三塁にいる時(満塁も含む)、打席に向かう右打者によく「サードゴロは打つな」と声をかけていたそうだ。この話は阪急、近鉄監督時代の選手たちから聞いた。強引な引っ張りを禁じ、センター返しを命じていた。

 理由の一つは外飛(犠飛)が上がりやすいことがあるだろう。また、ゴロでも中堅方向だと点が入りやすくなる。

 この夜、無死満塁では西岡剛が三ゴロ本封、無死三塁ではマウロ・ゴメス三直に倒れていた。

 無死なので、2度とも相手二遊間はバックホームの前進守備態勢ではなく、深く守っていた。センター返しの打撃姿勢なら、たとえ併殺打でも得点になっていた。時には狙い球を絞ることよりも打つ方向を定めることも必要なのだろう。

 ただし、西岡は左打席での打撃で、西本が禁じた強引な引っ張りではない。追い込まれ、ボテボテでも得点しようという姿勢は見えた。

 西本はまた「ちょっとやんちゃなヤツの方が本番では頼りになる」とも話していた。好機に萎縮している猛虎たちは、本来持っているはずの、やんちゃぶりを表に出せばいい。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

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2016年7月10日のニュース