初回四球で鬼に…金本監督 藤浪に“懲罰”続投161球

[ 2016年7月9日 06:00 ]

<神・広>降り続く雨の中、8回まで自己最多161球8失点の藤浪

セ・リーグ 阪神2―8広島

(7月8日 甲子園)
 鬼になった。阪神は8日の広島戦(甲子園)に敗れ、今季初めて自力優勝の可能性が消滅した。大事な首位チームとの3連戦初戦でも立ち上がりから精彩を欠いた先発の藤浪晋太郎投手(22)に対し、金本知憲監督(48)は怒り心頭。「10点取られても(最後まで)投げさせるつもりだった」と8回161球を投じるまで“懲罰続投”させた。チームは再び今季ワーストタイの借金10を抱え、わずか1日で最下位逆戻りとなった。

 首位・広島との大事な3連戦の初戦、初回。藤浪は先頭の田中に簡単に四球を与えた。今季、何度となく繰り広げられた光景に金本監督の表情が硬直した。鈴木の2点適時打に味方守備のミスも絡み、いきなり3失点。心を鬼にした。

 「きょうは最後まで投げさせるつもりだったけどね。もう何点取られても。責任いうか、あの立ち上がりがすべてでしょう。何にも変わっていない。もう何回連続やろ?」

 藤浪の初回失点は今季早くも8度目。その半分の4度は四球絡みだ。歯止めも利かない。続く2回2死無走者では田中にソロを浴び、3回1死二塁でも二塁走者への無警戒で単独三盗を許し、失点を重ねた。「昨日、青柳で勝って、さあマツダスタジアムの3連敗のリベンジというところでアレじゃ。やっぱりね。去年14勝した投手のやることでは、ないでしょ」。エースの気概が感じられなかった。

 懲罰の意味が込められた続投に終わりは見えない。131球を投じていた7回に打順が回っても代打を送らない。8回無死一塁でプロ初ボークを犯すなど背番号19は気力、体力ともに限界に近付いた。スタンドがどよめいても指揮官は不動。「責任を持って、何球投げようが何点取られようが。10点取られても本当に投げさせるつもりだった」。さすがに160球を超えた8回で替えたが、本気で“懲罰完投”させる予定だった。

 もっとやれるはず―。期待の裏返しだ。「正直、予定では10勝に行っていてもおかしくない投手。普通にやっておけば。それがチームの借金につながっていると言ったら、全部を背負わせ過ぎかもしれないけど、それくらいの責任はね。感じないといけない立場」。手遅れにならないよう今、やる必要があった。

 指揮官の真意は伝わったはずだ。自己最多161球、自己ワースト8失点の藤浪は「いきなり先頭に四球で、一番やってはいけない形で先制点を献上した。自分の弱さだと思う」とこうべを垂れた。「(前半戦を終えて)悔しいですし、自分自身に腹が立つし、情けない。そういう気持ちしかない」と神妙な面持ちで前を向いた。

 「(責任を)ただ感じるだけじゃなく、何をすればいいのかを考えて。4年目なんだから。(過去)3年、毎年10勝以上しているんだから」と指揮官。まだ、ばん回の時間はある。自力優勝の可能性が消滅し、再び最下位に沈んだ金本阪神の浮上には藤浪の力が不可欠だ。惟任 貴信)

 ≪“夏の甲子園”初めて負けた≫藤浪は6月2日の楽天戦(コボスタ)の完封以降5試合で3敗。4勝5敗で今季初めて黒星が先行した。甲子園の黒星は4月26日の巨人戦以来6度目。この試合まで通算41試合で20勝5敗の勝率・800と得意の球場で、特に7、8月は7試合で無傷の5勝。大阪桐蔭時代に選手権を制した12年から続いていた「夏の甲子園」連勝は9でストップ。所属のチームにも12試合目で初めて土が付いた。

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