阿部、復帰28戦10殊勲打 勝負はこれから「広島とガチンコで」

[ 2016年7月7日 05:35 ]

<巨・神>6回1死満塁、阿部は中前に決勝の2点適時打を放つ

セ・リーグ 巨人3―1阪神

(7月6日 東京D)
 巨人の阿部慎之助内野手(37)が6日、阪神戦の6回1死満塁から中前に決勝の2点打を放った。右肩痛から5月31日オリックス戦(京セラドーム)で復帰し、28試合の出場で殊勲打(先制、同点、勝ち越し、逆転)は10本目。伝統の一戦で勝負強さを見せつけた。チームを2連勝に導き、首位・広島とのゲーム差も9・5に縮めた。頼れる主砲は3つある借金完済、さらに広島とのガチンコ対決に持ち込むことを誓った。

 一塁ベースを回ったところで声を張り上げた。同点の6回1死満塁。阿部は外角のボール気味だった141キロ直球に体を目いっぱい伸ばし、中前に転がした。決勝の2点打。左腕・岩崎をKOし、感情を爆発させた。

 「(吠えたのは)1打席も無駄にしていない証拠。当たれば何かあると。そういう気持ちが出たから、(打球が)抜けてくれたんじゃないかなと思う」。百戦錬磨のさすがの一打だった。岩崎に内角を厳しく攻められ、1、2打席目はいずれも空振り三振。決勝打の打席も初球に内角高めの直球を投げ込まれた。「満塁でもインコースもしっかり攻められるいいピッチャー。燃えました」。3年目左腕に16年目のベテランがなめられるわけにはいかない。試合後は体勢の崩れた一打に「必殺の“1人(ヒット)エンドラン”です」と自虐気味に振り返ったが、試合の勝負どころでの集中力は研ぎ澄まされていた。高橋監督が「ここというところできっちり何とかするのはベテランというか、勝負強さ」と称えたように、今季わずか28試合の出場で10本目の殊勲打。チームに6月15、16日の楽天戦(東京ドーム)以来の連勝と、同3連戦以来5カードぶりの勝ち越しをもたらした。

 2日前。静寂の本拠地で黙々と練習に励む37歳の姿があった。秋田遠征からの移動で休養日。帰京後に阿部は1人、無人の東京ドームを訪れた。約1時間の打ち込み。ウエートトレーニングも行った。「休むと年だからダメなんですよ」。口ではそう言ったが、主軸の責任が満身創痍(そうい)の体を突き動かした。諦めていない捕手復帰への準備でもあった。

 6月後半から練習量を増やした。アーリーワークやノック後のベースランニングなどで練習強度を一段上げた。毎日、ウエアが透けてアンダーシャツの模様が見えるほどの大汗をかき「新人の頃を思い出している」。試合までに着替えを4度ほど行うなど捕手復帰へ準備を進める。2日前の静寂とはうって変わったお立ち台では「早くキャッチャーをやりたい気持ちもありますけど…」と言うと大歓声が起こった。

 宿敵・阪神に2連勝し、首位の広島とは4日ぶりに1桁の9・5ゲーム差に縮まった。広島との最大11・5ゲーム差をひっくり返した96年のメークドラマと状況は似ているが、阿部は「そういうのがあったら、とっくに勝っているでしょ」と笑い飛ばした。まだ追い落とす自信もあるからだ。借金は3。「球宴までに必ず借金を返して、そこから広島とガチンコでいきたいと思います!」。まだセ・リーグの灯を消すつもりはない。 (春川 英樹)

 ≪殊勲安打10本≫阿部(巨)が6回に満塁から勝ち越しの2点適時打。出場わずか28試合目で、肩書付きの殊勲安打を10本(先制4本、同点3本、勝ち越し2本、逆転1本)と早くも2桁に乗せた。今季のセで殊勲安打を10本以上は山田(ヤ)の16本を筆頭に14人。うち規定打席未到達は阿部だけだ。また、阿部の今季初出場は5月31日。同日以降に殊勲安打10本は、山田、筒香(D)、鈴木(広)の各8本を上回る最多本数と、短期間で驚異の量産だ。

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