【内田雅也の追球】メッセ魔の6回…「四球は失策」との考え

[ 2016年7月6日 09:45 ]

<巨・神>6回1死、中井に四球を与えるメッセンジャー

セ・リーグ 阪神2―3巨人

(7月5日 東京D)
 野球では古くから、0―0の均衡が破れるのはミスや一発と伝えられてきた。この夜もそんな定説通りの結果となった。

 発端は阪神先発ランディ・メッセンジャーが与えた四球である。6回裏1死で迎えた1番打者・中井大介に1ボール―2ストライクと追い込みながら、3連続ボールでこの夜、初の四球を与えてしまったのだ。カーブ、フォーク、速球と決め球がいずれも外れた。嫌な予感は阪神首脳陣も感じたことだろう。

 俗に「四球は投手の失策」といった言い方がある。実際に19世紀には公式に四球が失策として記録されていた。

 メジャーリーグ(ナショナルリーグ)が発足した1876年当時は「九球」(ナインボール)で打者は出塁していた。以後、八球→七球→六球→七球→五球と試行錯誤され、1889年から四球で今に至っている。

 この1880年代の数年間、四球(実際は八球や七球など)に加え、死球、ボーク、暴投も投手の失策と数えた。四球はミスという考え方は歴史的にみて野球の原点なのかもしれない。

 この四球が失点を呼んでしまった。直後の橋本到には初球ヒットエンドラン(ファウル)の後に一塁前ドラッグバントで意表を突かれ、マウロ・ゴメスが焦って打球処理が手につかなかった。記録は犠打失策である。

 いわば投手と野手の連続“失策”で1死一、二塁を招き、坂本勇人の投手強襲打が右前に抜ける間に二塁走者が生還。先取点献上となった。

 この時、投手コーチ・香田勲男がマウンドに歩んでいる。「何とか、最少失点でとどめてほしかった」と間(ま)をとった。この助言は正しく、1点で止めておけば、勝機は十分あった。

 だが、アリの一穴と言うべきか。0―0均衡は破れると、長野久義に右犠飛。坂本二盗をはさみ阿部慎之助右前適時打と畳み掛けられ、あっという間に3点を失った。

 相手先発の内海哲也も好投しており、1点勝負の展開で、慎重さがあだとなったとも言える。

 きっかけの四球が痛恨なのは間違いない。香田も「そうですね」と認めるが、この小さなミスで好投のメッセンジャーを責めはしていない。

 ただし、ロースコア接戦では、「四球=失策」の考え方が頭に浮かんでくる。こうした0―0の展開をものにできないところに、今の低迷の一因はある。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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