名門・横浜を託された33歳指揮官の挑戦 「世代交代」した夏到来

[ 2016年7月1日 10:00 ]

 きょうから7月。いよいよ、夏の高校野球地方大会が本格化する。

 昨夏、東海大相模が全国制覇を果たした神奈川では、「世代交代」して初めての夏を迎えるチームがある。春夏通算30度の甲子園出場で5度の優勝を果たしている名門・横浜だ。昨夏限りで渡辺元智監督が勇退。後を引き継いだのは06年4月からコーチ、10年4月から部長を務めてきた野球部OBで教諭の平田徹監督。33歳だ。昨年5月に渡辺監督から勇退の報告を受けた時は「頭が真っ白になった」という。

 これまでの横浜は、渡辺監督と小倉清一郎部長の名コンビで数々の舞台を戦ってきた。そこから今度はぐっと年齢の若い指揮官へバトンタッチ。監督の6歳上の金子雅部長との二人三脚が始まった。常勝を宿命づけられた名門を託され、計り知れない重圧だったことだろう。就任直後の秋の神奈川県大会を制したが、関東大会では初戦の常総学院戦に敗れてセンバツ切符を事実上逃した。ぼうぜんとしながら、横浜へ帰ってきたという。それでも、持ち前の貫禄とトレードマークの笑顔は失わなかった。春の県大会では再び頂点に立ち、関東大会では準優勝。春の大会では左腕エース・石川に背番号1を渡し、エース右腕・藤平には奮起を促すために10番を背負わせるなど随所で夏への布石を打っていた。「選手には“夏の大会に向かって苦しい試合をたくさんしよう”と話をしている」という言葉が印象的だった。

 名門ゆえに、周囲は応援もすれば叱咤(しった)する声もあった。6月26日に横浜高グラウンドで行われた花咲徳栄との練習試合には、グラウンド外周に二重三重の人垣ができるほどの観客が詰めかけた。観戦に訪れていたOBがぽつりとつぶやいた。「いろんなことを言う人はいるけれど、俺は平田を応援したいんだ」。期待の大きさがひしひしと伝わってきた。渡辺前監督も、就任当初は相当な苦労をしたと聞く。厳しい道を歩み出した若き指揮官の勇気を称えたい。7月17日、保土ケ谷球場から横浜の夏が始まる。(記者コラム・松井 いつき)

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2016年7月1日のニュース