【内田雅也の追球】阪神を逆転勝利に導いた“熱い心”と“冷静な頭”

[ 2016年6月18日 10:25 ]

<神・ソ>6回2死満塁、梅野は押し出し四球を選ぶ

交流戦 阪神3―2ソフトバンク

(6月17日 甲子園)
 今は阪神オーナー付シニアアドバイザー(SA)の和田豊は打撃コーチ、そして監督として「ウォーム・ハート、アンド、クール・ヘッド」(心は熱く、頭は冷静に)という言葉をよく使った。

 元は経済学者アルフレッド・マーシャルの「クール・ヘッド、バット、ウォーム・ハート」である。ケンブリッジ大学の学生に「経済学を学ぶには冷静な頭脳に加え、人びとを豊かにしたいという温かい心が必要だ」と説いた。高校時代、政経の授業で聞いた教師の言葉を覚えている。

 阪神が強者ソフトバンクに逆転勝利できたのはむろん熱き心もあるが、冷静さである。

 同点の9回裏2死、右前打の北條史也の代走で一塁に立った俊介には「グリーンライト」(青信号)が灯っていた。二盗はいつでも行っていい。

 それでも俊介は冷静だった。マウンド上のサファテは打者・福留孝介へ初球を投げる前に3球、2球目の前に2球、けん制球を放ってきた。当然の警戒である。

 「あそこで行くのは簡単じゃない」と一塁ボックスの外野守備走塁コーチ・中村豊もみていた。

 決断はファウルで2ボール2ストライクと打者が追い込まれた5球目。捕手・鶴岡慎也が二塁送球をあきらめるほど、悠々セーフだった。

 「完全に盗んでいました。120%セーフ。もっと早く走ってほしかったが大したもんです」。中村がたたえたのは俊介の勇気、行けるまで辛抱した冷静さにある。

 直後の6球目、左前打でサヨナラの本塁を奪ったのは熱さの方か。

 6回裏の同点劇も冷静さが光る。中田賢一に5回まで無得点。四球が1つもなかった。

 中田とは中日時代から幾度も対戦していた。当時はコーチの森繁和が「暴れ馬」と呼ぶほど、荒れ球が特徴だった。

 変わったのではない。昨年まで通算1267回を投げ与四球467個。9イニング平均3・31個。今季は25回1/3で13個、同4・62個。今季の方が多い。

 じっくり攻めれば、制球難が顔を出すはず、との算段はあったろう。

 果たしてその通りになった。初の四球などで2死満塁。伊藤隼太が0ボール2ストライクから4球連続で誘い球を見極めて押し出しで1点。梅野隆太郎も見極めて連続押し出しで同点とした。

 場内は押せ押せの熱気のなか、彼らは冷静だったのだ。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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