2つの変化で復活したイチ流打撃 目線固定「ぶつける」スイングに

[ 2016年6月17日 11:00 ]

<パドレス・マーリンズ>現在のイチローの構え

ナ・リーグ マーリンズ3―6パドレス

(6月15日 サンディエゴ)
 42歳での進化がマーリンズ・イチローに「ローズ超え」をもたらした。今季は先発出場が限られる中で打率.349。10年連続200安打が途切れた11年以降、打率は毎年3割を切り、昨季は.229にまで沈んだ。全盛期と遜色ない打棒がよみがえった背景には、2つの変化があった。

 (1)スイングのシンプル化 かつて代名詞だった「振り子打法」の表現が示すように、以前は弓道のように、グッと引いた弦を一瞬にして解き放つことで爆発的な瞬発力を生んできた。ところが、ここ数年は速球に差し込まれることが多く、相手の攻めも勝負どころでは高めの速球系が中心になっていた。

 そこで「しなるスイング」から、最短距離で「ぶつけるスイング」へシンプル化した。ステップする右足はほぼすり足に。グリップを左耳後方へ引っ張ってからスイングしていたものを、最初からトップの位置で待ち、そこから最短距離でバットを出す。コンマ数秒の時間短縮を模索した。

 (2)軸回転に近いスイング イチローといえば、重心が前に移動しながら打つ打法で知られるが、最近は目の位置がステップした分だけ投手側へ動くことで、スイング時に下がる傾向があった。現在は動く距離は半分以下で、下がることもなく目線が固定された。「それはなかなかのものですね。なかなかです」とその変化について語るイチロー。「なかなか」という言葉を用いる時は、「凄い」というニュアンスのことが多い。

 可能にした理由は「スパイクですね」と言う。昨季から履くビモロ・スパイクは、国際特許を持つソールの3本ラインが特徴で、力を左右に逃がさない。また練習で履くビモロ・シューズは例年年間約20足を履きつぶすが、今季は消費量が3割ほど増えた。力をため込むのが軸足となる左足の母子球部分。その部分だけが極端にすり減り、次々と交換されていく。

 今季44安打中、半数以上の23本が150キロ超えの速球を叩いたものだ。三振は140打席でわずか7。20打席に1個は、メジャー1年目の01年の13.9打席に1個をはるかにしのぐ。イチローは全盛期をほうふつさせる輝きを放っている。

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