イチロー 速球殺し 昨季苦戦も際立つ本格派攻略 42歳の進化

[ 2016年6月11日 05:30 ]

<ツインズ・マーリンズ>7回、生還したイチローはチームメートに迎えられる(AP)

インターリーグ マーリンズ10―3ツインズ

(6月9日 ミネアポリス)
 マーリンズのイチロー外野手(42)が9日(日本時間10日)、ツインズ戦に「1番・右翼」で先発し、3試合連続のマルチ安打をマーク。メジャー通算2973安打とし、ピート・ローズの歴代最多4256安打まで日米通算で残り5本に迫った。昨季は速球中心の配球に苦戦したが、今季は踏み出す足をほぼすり足に近い打法に変更して力強い打球が復活。進化を見せつける2安打で、また一歩金字塔に近づいた。

 広角打法が持ち味の背番号51が、プルヒッターに変身した。初回、右腕サンタナの93マイル(約150キロ)直球を叩いて強い打球で一、二塁間を破る。さらに2―2の7回1死一、二塁では再び93マイル直球を鋭いスイングで捉えると、痛烈なライナーが右中間に弾む。決勝適時打で、この回一挙7点の猛攻につなげた。

 この3連戦は15打数7安打の大爆発。その7安打全てが右前打だった。「あ、そうか。別に意図したことはないからね。まあ、驚くことではないですから」とはぐらかした。だが、強く引っ張る打撃こそ、今年のテーマの一つだった。

 昨季は自己ワーストの打率・229。速球中心の攻めに苦戦したことも理由だ。その反省から今季は、パワー系の速球に力負けしない打撃をテーマに取り組んできた。スイングの無駄を省くため、ステップする際に踏み出す右足はほぼすり足に近いイメージに。これまでのムチのようにしなるスイングから最短距離でバットをぶつけるスイングに変え、この日も93マイルの直球を確実に捉えた。

 イチローとの対戦数が投手別で3番目に多く、通算で95打数32安打、打率・337と打ち込まれている右腕サンタナは「彼は簡単に打っているように見せるよね」と脱帽するしかなかった。

 メジャーのシーズン最多262安打をマークした04年にマリナーズで打撃コーチを務めていたツ軍のポール・モリター監督と対戦した3連戦。「モリターに会えたのはよかったね。(練習中に)わざわざ来てくれたし、あんなことあり得ないですから」と敵将自ら歩み寄ってきてくれたことに感激の言葉を述べ「(いいところを見せたい気持ちは)そりゃ、もちろんありますよ。見せられたというよりは、見せたいからね」と言った。

 通算3319安打を誇る恩師の前で進化を遂げた姿を披露。ローズの記録にあと5本とした42歳は、ご機嫌でミネアポリスを離れ、次の遠征地フェニックスに向かった。(笹田 幸嗣通信員)

 ≪際立つ本格派攻略 驚異.550≫イチローの今季の投手タイプ別の打撃成績で見ると、本格派への強さが際立つ。米データサイト「ベースボール・リファレンス」は、奪三振数と与四球数を足した数がリーグの上位3分の1に入る投手を「本格派」と定義。平均、技巧派(奪三振数と与四球数を足した数がリーグの下位3分の1)と3つに分類している。過去2年は2割台だった本格派との対戦打率は今季.550と突出している。

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