大谷“リアル二刀流”の陰で「可愛すぎるスラッガー」谷口の気遣い

[ 2016年6月2日 08:15 ]

5月29日の日本ハム―楽天戦、初回2死二塁で一ゴロに倒れた大谷(左)にグラブを手渡した谷口

 何げない気遣い。これもまた大事だった。5月29日の日本ハム―楽天戦(コボスタ宮城)。日本ハム・谷口はベンチから戦況を見つめた。初回2死二塁。DHを解除され「6番・投手」で出場した大谷は一ゴロに倒れた。攻守交代。谷口は一塁まで全力疾走した大谷に歩み寄り、水分補給用のカップとグラブを手渡した。

 「翔平には気持ち良く投げてもらいたかった」。大量リードで迎えた7回。2番・中島から始まる打順。大谷は市川とキャッチボールをして次の回への準備をしていたが、打順が4番・中田まで回ってくると打撃の準備のためベンチへ戻った。5番・陽岱鋼に打順が回ってきても、大谷は打撃手袋をはめるなど準備に追われた。この時、ネクストバッターズサークルに立っていたのも、また谷口だった。

 公認野球規則で「次打者がネクストバッターズサークルにいなければならない」という決まりはないが、円滑な試合進行のために必要な最低限のマナー。公認野球規則5・04(b)で「打者は自分の打順がきたら、速やかにバッタースボックスに入って、打撃姿勢をとらなければならない」と明記されている。谷口は「チームのために誰かがやらないといけない」と言う。この日は交流戦前の最終戦。同じくベンチにいた1歳年下の新人・横尾に「(セ・リーグ主催の)交流戦になったらこういうこともあるからな」とプロの先輩として助言する姿もあった。

 大谷は7回1失点で3勝目を挙げ、打っては3安打1打点と投打で大暴れ。谷口のベンチワークは一見、地味に映るが、大谷の歴史的快挙を確かに支えた。プロ6年目の谷口は今季、開幕から1軍に定着しているが、外野の定位置確保までは至っていない。それでも、5月19日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では代打で今季1号3ランを放ち、チームの逆転勝利に貢献するなど徐々に力を発揮しつつある。

 谷口は言った。「その日の人間が、その日のレギュラー」。チームの勝利のため、今、自分に何ができるか。女性ファンからの人気が高く、「可愛すぎるスラッガー」としての話題が先行するが、内に秘める闘志は熱い。(記者コラム・柳原 直之)

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2016年6月2日のニュース