阪神 引きこみかけた“流れ”を手放した「大きなミスよ」

[ 2016年6月1日 09:50 ]

<楽・神>7回1死一塁、足立の捕前送りバントを原口が二塁に送球するもアウトに出来ず

交流戦 阪神1-9楽天

(5月31日 コボスタ宮城)
 【内田雅也の追球】長く野球を見ていると試合の「流れ」が変わるプレーにある種の傾向があることがわかる。

 多くはミスだ。走塁死や盗塁死(守備側では走塁刺や盗塁刺)で、憤死した側は流れを失い、刺した側は流れをつかむ。

 この点で、5回まで楽天先発の則本昂大に無安打無得点に抑え込まれていた阪神に流れを引き込むプレーがあった。5回裏の守り。2死一、三塁からの重盗を捕手・原口文仁が阻止した。一塁走者・吉持亮汰がディレードスチール。捕球した原口は三塁走者・岡島豪郎の大きなリードを察知し三塁送球で刺したのだ。この好プレー後、5回終了のグラウンド整備で5分間の空白もあった。

 流れは確かに変わり、6回表1死、鳥谷敬初安打に上本博紀二塁打で鳥谷が長駆(ちょうく)生還した。本塁上クロスプレーはアウトと判定されながら、リプレー検証でセーフに覆った。2点差に迫り、誰しも終盤勝負に持ち込めたと思ったはずだ。

 だが、引き込んだ流れを阪神は自ら失う。守備のミスだった。7回裏1死一塁からのバントは捕手前に転がり、原口が二塁に悪送球しセーフ(記録は犠打野選)。直後に連打で2失点。さらに1死一、二塁からの遊ゴロ6―4―3の併殺コースを上本が一塁に低投し打者走者を生かした。残った2死一、三塁から3失点し勝負はあった。いずれも失策が記録されないがミスには違いない。

 「大きなミスよ」と敗戦後、ヘッドコーチ・高代延博は語気を強めた。「いろんなミスがあるが送球ミスはいかん。投げられんヤツは打席に立つ資格はない、と監督も言うとる。原口も送球の問題だろう」。上本には直後の打席で代打が出た。

 「このところ(ミスが)続いとる。何もほったらかしにしているわけやないけどね。締めてかからんと」。試合前練習で守備に重点を置くが改善されない現状がある。

 シーズンの流れが変わる節目、交流戦初戦でパ・リーグ最下位に喫した惨敗に暗い影が差す。阪神同様に楽天も若手を登用し、先発メンバーに4人の新人が名を連ねた。若さ、はつらつさでも劣勢に立っていた。

 <野球が本当にはじまるのは六月だ>と米コラムニスト、ロジャー・エンジェルは書いた。『シーズン到来』というエッセーにある。本格的な優勝争いが始まるという意味だ。きょうから6月。本当の勝負はここからである。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

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2016年6月1日のニュース